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2020年4月5日(日)

主張

コロナ危機と文化

灯を消さない支援は国の責任

 新型コロナウイルスの感染拡大で日本の文化芸術が重大な危機に直面しています。政府や自治体による自粛要請が存続を足元から揺るがしています。文化芸術は人々の暮らしや社会に欠かせません。これまでも政府の貧弱な文化施策は関係者に極めて厳しい活動を強いてきましたが、今回は苦境にさらに拍車をかけています。このままでは、日本の文化の灯が消えてしまいます。安倍晋三政権は損失への補償をはじめ大規模な直接支援などで責任を果たすべきです。

担い手が立ち上がれない

 自粛要請によって中止、延期された公演、イベントは8万件を超え、損失は約1750億円と見込まれます。今後さらに悪化する恐れがあります。3月に開かれた「新型コロナウイルスからライブ・エンタテインメントを守る超党派議員の会」の会合では「文化そのものが死にかねない」と業界から悲痛な訴えがありました。

 収益、収入を失った上、費用を回収できず借金を背負った事業者、アーティストがいます。飲食店などで働きながら活動している多くの若手が、アルバイトの職を失って生活の基盤を崩され、研さんやデビューへの道を閉ざされています。担い手が立ち上がれなくなれば文化芸術の未来はありません。守るのは国の役割です。自粛の要請と補償はセットでなければならないことはいよいよ明白です。

 文化芸術基本法は前文で、文化芸術について「心豊かな社会を形成するものであり、世界の平和に寄与する」と社会的意義を強調しています。日本文化の環境については「十分な状態にあるとはいえない」とし、「表現の自由」を明記しつつ、振興策の必要性を指摘しています。この法の精神に照らしても、国が今の危機的状態を放置することは許されません。

 しかし、安倍政権の進めている対策は、必要な水準からほど遠いものです。他の中小事業者同様、無利子の制度融資で対応すると言います。東京都内には無数の劇団がありますが、ほとんどは個人の活動で法人格を持たないため、貸し付けの対象になりません。直接支援に対しては「税金による損失補てんは困難」というかたくなな態度です。フリーランスへの支援は、休校した小学校に通う子を持つ人しか対象にならず、金額も労働者の半分です。「新たな給付金」の支給をすると言いますが、規模も内容も全く不十分です。

 もともと日本の文化予算はあまりに少なく、2020年度の文化庁予算は1067億円と政府予算のわずか0・1%です。主要国中で最低レベルです。文化芸術は個人の努力だけでつくり上げられるものではありません。創造に携わる人と鑑賞する人、公的支援があってはじめて成り立ちます。

ドイツでは手厚い補償

 ドイツ政府は新型コロナ感染拡大に際し「一度失われたものは早急には再建できない」として補償を含む数十億ユーロ(数千億円)規模の文化芸術への支援策を決めました。グリュッテルス文化相は「芸術家は必要不可欠であるだけでなく生命維持に必要なのだ」と宣言しています。国内総生産(GDP)がドイツを上回る日本にできないはずがありません。要は政府の姿勢です。損失補償を含め一時的な給付金にとどまらない思い切った支援を決断すべきです。


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