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2020年3月17日(火)

きょうの潮流

 障害者が消えた―。東日本大震災直後、各地の避難所を回っても見当たらない。自宅に閉じこもっていたり、車の中にいたり。避難所にも居場所がない孤立した姿がありました▼障害者団体「きょうされん」が昨年制作し、全国で上映の輪がひろがる映画「星に語りて」。震災が突きつけた過酷な現実を描き出しました。被災で地域の人間関係がとぎれ、行政の対応も後回し。ふだんは見えにくい内なる差別を実感した関係者も多い▼日本中を震え上がらせた相模原事件の植松聖被告に死刑が言い渡されました。多くの重度障害者を殺傷した被告の責任とともに、犯行に至る考え方や背景は判決が出されても私たちの社会に問いかけます。内なる差別は、なぜ存在するのかと▼不幸を生む不要な存在、生産性のない生きる価値のない人間…。いのちを選別する彼の言動はこの国のありよう、すべてのいのちが大切にされない格差や分断社会の投影でもあるでしょう▼「私たちのねがいは重症な障害をもったこの子たちも立派な生産者であるということを、認めあえる社会をつくること」。障害者福祉の父と呼ばれた糸賀一雄さんは、誰もが生まれながらにしてもっている人格発達の権利を徹底して保障することを訴えました▼3・11の原発事故は国のかたちを見直すことをもとめました。相模原の事件は、いのちを線引きする社会を考え直すきっかけになりました。利益や効率が優先されるなかで生きる私たちに問い続けます。このままでいいのかと。


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