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2020年3月13日(金)

きょうの潮流

 1年間かけてじっくり描く、主人公やおもな出演者に中高年の俳優がそろう。いずれも昨今のテレビドラマにはない試みでした。倉本聰作の「やすらぎの刻(とき)~道」の放送も今月末までです▼往年の名優たちが集う老人ホームでの話に、山梨の集落に暮らす名もなき夫婦の戦中・戦後の劇中劇が加わり、重層的な構成。劇中劇のタイトル「道」は、庶民が歩んできた時代のことを指しているのでしょうか▼時代や社会と正面から向き合って物語が展開します。とりわけ印象深かったのは、戦争を拒否する登場人物たちの姿です。徴兵を逃れようとする人、特高警察の弾圧に抵抗する人たちの話がつづられました▼折しも11日の放送では、9年前にさかのぼり東日本大震災当日の話が前面に出てきます。福島に住む、主人公の娘一家を原発が襲いかかったのです。「戦時中の空襲に見舞われたころの気分が舞い戻った」との語りは痛切です▼老いの悲哀と死への葛藤もにじみました。それは演じる俳優らの心情と重なります。前シリーズから振り返ると野際陽子、八千草薫、山谷初男、梅宮辰夫ら何人もの出演者が亡くなりました。最後まで撮影に打ち込んで、仕事を全うしたことを身をもって示したのです▼「点描画とやすらぎの刻展」を都内で開催中です。倉本さんが手がけた70点ほどの絵には、北海道・富良野の樹齢400年を超える桂(かつら)の巨木や熊のフミコ、そして福島・富岡町の桜がくっきりと。ドラマにも登場する生き物らが命の声を伝えます。


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