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2020年3月11日(水)

きょうの潮流

 広い砂浜にきれいな松林は、まさに白砂青松(はくしゃせいしょう)。ほんとにいいとこだった―。陸前高田の昔がたりの会。語り手のお年寄りたちは記憶のなかにある宝物を口々によみがえらせます▼名勝、高田松原。いまや「奇跡の一本松」が残るこの地に昨年、津波伝承館ができました。東日本大震災の津波がいかに巨大で恐ろしかったか、自然災害から命を守るための教訓を伝えます。あの日の悲しみをくり返さないように▼海を遮断する防潮堤から山側に目を転じると、かさ上げされた新しいまちが見えてきます。商業施設や店の再建が進む一方で、埋まらない空白も目立ちます。あれから9年。年月を経るにつれて湧きあがるのは、ふるさとの喪失感です▼高台からおりてよく海を眺めにくるという80代の老夫婦。変容するまちに自分たちも置いていかれるような気持ちだと話します。宅地が造成され道が整備されても、被災者の心のケアや地域の再生はなお途上にあります▼人口減、街づくりや地域の将来への不安、生業(なりわい)や生活支援…。いま共通する課題に求められるのは、それぞれのまちや一人ひとりの実情に寄り添った施策を継続していくことではないか。政府は復興期間を10年と定めますが、機械的な打ち切りに懸念や反対の声が上がっています▼安倍首相は政府主催の追悼式を来年で取りやめる方針です。国営の追悼施設が完成した陸前高田の戸羽太(とば・ふとし)市長は被災者の心情に合わないと。さら地に立ちすくむような寂しさや悲しみが募る、国の姿勢です。


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