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2020年3月4日(水)

新型コロナ対策 国民の不安にこたえ、対案示す

参院予算委 小池書記局長の質問

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(写真)質問する小池晃書記局長(右)=3日、参院予算委

 3日の参院予算委員会で、新型コロナウイルスやジェンダー平等をめぐる問題で政府の対応をただした日本共産党の小池晃書記局長。安倍晋三首相を厳しく追及するとともに、国民の不安にこたえ、希望を広げる積極的な提案を行いました。

一律休校

科学的根拠に基づく対策を

 新型コロナウイルス感染防止策として安倍晋三首相が要請した全国の小中高校・特別支援学校の一律休校について、小池氏が科学的根拠を示すよう求めたのに対し、安倍首相は「政治的に判断した」と繰り返し、科学的根拠がなかったことが明確になりました。

 小池氏は、「全国一律休校方針を見直して、科学的根拠に基づく感染予防の道に進むべきだ」と提起。その上で、期間限定や休校しないなど各自治体がとっている自主的判断に是正指導をしないよう求めました。

 萩生田光一文科相は、休校要請については「学校の設置者の判断がある。それは尊重する」と答え、事実上、「全国一律休校」を撤回しました。

 小池氏は、「給食の停止により大きな影響を受ける牛乳や野菜などを納品する農家をはじめとした関係者を守るため、あらゆる手だてを尽くすべきだ」と提起。江藤拓農林水産相は、長期休業の際に牛乳を引き受ける工場に振り向けるなどとし、それでも減収になる業者に対しては「手だてを検討している」と答弁しました。

休業補償

「雇調金」助成水準 10割に

 小池氏は、新型コロナウイルスの影響を受けた業者を対象とした雇用調整助成金(雇調金)の拡充を求めました。雇調金は、売り上げや生産の減少を余儀なくされても従業員の雇用を維持した企業への助成制度。休ませた従業員に賃金の6割以上を支払う「休業手当」などに対し、中小企業の場合は3分の2を助成します。

 小池氏は、自粛要請などによる「休業手当」への助成は賃金の4割程度にとどまると指摘。一方で、2日発表された一律休校により仕事を休んだ保護者に賃金を支払った企業に対する新たな助成金制度は、1人当たり日額8330円を上限に、10割を助成するという違いがあることを示し、雇用保険2事業の積立金1兆4400億円なども活用して「雇調金の助成水準を引き上げ、賃金の10割補償とすべきだ」と求めました。

 加藤勝信厚労相は、緊急事態宣言を出している北海道などで「対策を打っていきたい」と答弁。小池氏は「被害は全国に広がっている。危機意識がない。きちんと手当てすることが最低限の政治の責任だ」と指摘しました。

 新たな助成金制度の対象になっていないフリーランスへの対応について安倍首相は、経営相談窓口の設置や、貸し付けなど資金繰り支援の措置を講じると説明しました。

 小池氏は、音楽家や劇団員といったフリーランスは政府の要請による公演・イベントの中止で収入が断たれるとし、「貸し付けではなく損失補てんが必要だ」と強調。新たな助成制度で対象となる労働者と同様の対応を検討するよう求めました。

医療体制

統廃合をやめ 病床確保急げ

 安倍首相は2月29日の会見で、治療のために必要なベッド数について「全国で2000を超える病床がある」「緊急時は5000床を超える病床を確保」と説明しました。首相の説明について加藤勝信厚生労働相は3日、感染症病床2000のうち空床は1300床で、さらに一般病床を4000床分確保できると説明しました。

 小池氏は総務省が2017年12月に行った「感染症対策に関する行政評価・監視」では感染症指定医療機関の診療体制について、「指定病床数通りの患者の受け入れを危惧する医療機関」が23%もあり、実態把握を勧告していたと指摘。にもかかわらず厚労省がいまだに調査結果をまとめていないとし、「(勧告は)2年前だ。こんなことでいいのか」と批判しました。そのうえで小池氏は、中国・武漢からチャーター機で帰国した体調不良の5人を最初に受け入れたのは公立病院だったことにふれ「政府も公的病院の重要性を改めて認識したのではないか」と強調。安倍政権が狙う公立・公的病院の統廃合を見直すよう求めました。

 加藤氏は「感染症病床全体の9割以上を公立、公的医療機関が担っており、果たす役割は大きい」と答えました。

 小池氏は、医療現場では従事者の感染防止に必要なマスクや防護服の不足が深刻で、現場からは「職員の安全が守れない」との声が上がっていることを紹介し、現場にマスクなどを届けるよう要求。「感染症指定医療機関に優先的に供給」すると言う加藤氏に対し、「一般医療機関にも発熱患者が受診する。指定医療機関以外にもマスクを供給する仕組みをつくるべきだ」と提起しました。

 政府は、感染症の疑いがある場合「帰国者・接触者相談センター」に連絡するよう案内しています。相談センターで必要があると判断された人は、全国で844カ所ある帰国者・接触者外来で受診することになります。

 加藤氏は、2月1日からの同外来受診者数は2185件だと報告。小池氏は、相談センターでは6万件を超える相談を受けているのに約30件に1人しか受診していないことをあげて「帰国者・接触者相談センターがバリアーになってしまっていないか」と述べ、帰国者・接触者外来にきちんと誘導されていない状況を指摘。必要な人が受診できるようにせよと求めました。

検査体制

PCR検査 誤解ない説明を

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(写真)日本の国立感染症研究所と米国疾病対策センターとの比較

 新型コロナウイルスの感染を判定するPCR検査について、安倍首相は「保険適用により、保健所を経由することなく民間の検査機関に直接、検査依頼を行うことが可能となる」(2月29日の会見)、「かかりつけ医が必要と考える場合にはすべての患者がPCR検査ができる」(3月2日の答弁)と説明しています。

 小池氏は、首相のこうした説明を受けて多くの国民が保険適用でどこの病院でも検査が受けられるようになると思っているが、当面は「帰国者・接触者外来」を持つ844の医療機関だけで対応するというのが政府の方針ではないのかと確認。加藤厚労相は「いまはそうだ」と認め、かかりつけ医など一般の医療機関で対応できるようにしていくのは次の段階だと認めました。

 小池氏は、「帰国者・接触者外来」を持つ病院の名前はそもそも非公開で国民は知る由もないと指摘。今回の措置で、その他の医療機関は検査の依頼すらできなくなるという問題にもふれ、首相の発言は誤解を招いていると、答弁の訂正を求めました。

 安倍首相は「いますぐできるとは申し上げていない」「私の会見を見れば誤解は生じない」と開き直りました。

 小池氏は「これだけ国民が不安を抱えているのだから、誤解の余地のない丁寧な説明に心がけるべきだ」と求めました。

 小池氏は、国立感染症研究所の予算がピーク時の約107億円(2007年度)から約65億円(20年度予算案)へと6割に減らされたことを確認。実人員は348人で、実際に新型コロナウイルスのPCR検査に携わっているのは十数人だと明らかにしました。

 アメリカ疾病対策センター(CDC)の人員体制は、1万4000人(常勤職員)と日本の国立感染研の40倍以上、年間予算は120億ドル(1兆3000億円)と200倍です。

 小池氏は「国を守るというのであれば、こういう部門にこそ予算をつぎ込むべきだ」と述べ、国立感染研の抜本的な強化を求めました。

 加藤厚労相は「充実を図るべく努力していきたい」と答えました。

経済対策

中小企業に無利子融資を

 新型コロナウイルス感染症対策として出した政府の要請により、外出や外食、イベントの中止が相次いでいます。中小零細企業は収入の道が途絶える一方、家賃やリース料など負担がのしかかります。

 小池氏は「リーマン・ショック時は20兆円の緊急保証制度。98年の金融危機は金融安定化特別保証制度を30兆円まで拡大。ところが今回5000億円。これは2月13日に決めたもので、事態は全く変わっている。思い切って拡充すべきだ」と迫りました。

 政府の「衛生環境激変対策特別貸付」ではコロナウイルス感染拡大による影響を受けた旅館業等の資金繰りを支援します。しかし金利が1・9%と売り上げが激減している中小業者にとって低いとは言えません。小池氏は「これで支援になるのか。財政投融資からの調達金利は0・003%だ。無利子・無担保・個人保証なしの融資に」と迫りました。安倍晋三首相は「災害の時と同じ金利だ。それ以上の要因があれば検討していきたい」と答えましたが、小池氏は「災害以上に政策による要因がある。政治の責任が問われている」と強調しました。

 小池氏は、消費税10%増税による深刻な経済の打撃を取り上げ「さらにコロナウイルスの問題も加わり大変なことになっている。消費税率5%への減税に踏み切り、抜本的な経済対策を求める」と訴えました。

ジェンダー平等推進

男女賃金の格差是正へ

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(写真)経済協力開発機構(OECD)のデータベースをもとに大和総研の資料から小池事務所が作成。男女間賃金格差とは、男女の所得の中央値の差を男性の所得の中央値で割った数値。フランスは2014年、イタリアは2016年の数値。

 職場におけるジェンダー平等の実現を―。小池氏は日本の深刻な男女賃金格差を是正するため、男女賃金格差状況の把握、公表を企業に義務づけるべきだと迫りました。

 主要先進国のフルタイム労働者の男女賃金格差は約25%と日本が最も大きくなっています(グラフ)。女性は短時間のパートも多く、実際の格差はさらに大きくなります。

 小池氏はこうした実態を告発した上で、昨年の女性活躍推進法審議のさい、男女の賃金格差状況の開示も「把握」も義務づけられなかったと指摘。労働政策研究・研修機構の調査によれば、男女間賃金格差指数を定期的に計算している企業はわずか3・3%だと述べ、「企業が性差別の解消にむけて本気で取り組むには、企業自身が把握し改善の必要性に気づくことが必要だ」と追及。加藤厚労相は労働政策審議会で慎重な意見があったことを口実に義務化に背を向けました。

 小池氏は、1999年3月まで有価証券報告書が平均給与額などを男女別で開示していたと述べ「復活すべきだ」と要求。麻生太郎財務相が「開示は経営者にとって負担だ」などと拒否したのに対し、小池氏は、アイスランドが男女に同額賃金を支払っている証明書の取得を使用者に義務づけたことを紹介し、「先進事例に学び取り組みを進めるべきだ。第一歩として賃金格差の把握を義務づけ、さらに情報公開を」と求めました。

 安倍首相は、政府の女性活躍推進と、有価証券報告書での男女別の給与額などの開示が「同じ方向か検討したい」などと答弁。小池氏は「基本的な方向はまさに合致している。見直すべきだ」と訴えました。

女性にだけ苦痛許すな

 小池氏は、職場における暴力とハラスメントの防止も課題だと述べ、職場で女性にだけパンプス・ヒールを強制するのをやめるよう求める「#KuToo」運動をとりあげました。

 小池氏は「パンプスやヒールは、外反母趾(ぼし)や腰痛など健康被害を招く。性差別であり健康・労働問題だ」と指摘。安倍首相は「苦痛を強いるような合理性を欠くルールを女性に強いることは許されない」と答弁しました。

 小池氏は、日本航空の女性客室乗務員の制服規定を挙げ、「機外ではヒール高3~6センチ、機内では高さ3~4センチ・横幅3~4センチのパンプスをはくこととされ、はき替えのタイミングまで指定されている」と告発。就職活動する女子学生などへの「暗黙のルール」もあると指摘し、「パンプス着用の強制に業務上の合理性はない」と力を込めました。

 その上で、英国政府が2018年に発表した「ハイヒールの着用規定のようなジェンダーに特定した規定は避けるべきだ」との見解や、ジェンダーハラスメントを禁止する法令の制定を加盟国に義務付けるILO(国際労働機関)条約を挙げ、「男女の賃金格差も、ジェンダー平等に反する服装規定もなくす政治の責任が問われている」と強調しました。

 安倍首相は「関係法令の着実な執行にとりくみ、職場におけるジェンダー平等の確保に努めたい」と答えました。


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