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2020年3月2日(月)

きょうの潮流

 はしゃいだ笑い声にやりきれなさが募ります。幼い娘に怖い思いをさせたくないと父親が考えた遊び。それは爆音が聞こえたら笑うというゲームでした▼反体制派最後の拠点といわれる中東シリア北西部のイドリブ県。アサド政権軍による激しい爆撃にさらされるなか、少しでも恐怖で心が痛まないようにと笑い合う親子。その姿はSNSで発信され、世界中で反響を呼びました▼シリアで民主化を求める反政府デモが始まってから、もうすぐ10年目に入ります。内戦によって市街地はがれきと化し、子どもや女性をはじめ民間人をふくむ犠牲者は数十万にものぼるとされます。破壊と殺りくは第2次世界大戦後、史上最悪の人道危機とも▼トルコとの国境に近いシリア最大の都市アレッポ。長く激しい戦闘がつづいたこの地にとどまり、死と隣り合わせの生の喜びを記録してきたドキュメンタリー映画「娘は戦場で生まれた」が公開されました▼アレッポ大の学生だったワアド・アルカティーブさんは市民の側から内戦の現実を映してきました。惨状の街で医師と結婚し娘を出産。日常の幸せをあきらめず、普通の生活を送る。それが政権の残虐さを問いただすことにつながると信じて▼国連が停戦を呼びかけるなか、いまもイドリブ県では学校や病院が攻撃されています。ワアドさんは生きる希望となった娘に空を意味する「サマ」と名付けました。自由と平和への願いを込めて。その空を見上げる人びとの心を破壊できるものは、誰もいないと。


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