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2020年2月23日(日)

主張

入試の主体性評価

生徒の学びをゆがめる愚策だ

 文部科学省は、2021年実施の入試から各大学の一般選抜で「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を評価し、合否判定に使えるシステムを導入する計画です。これによって、高校での学びがまるごと電子データに蓄積され、その管理に民間事業者が関与することに、教育現場から深刻な懸念が出ています。その中で、萩生田光一文科相は21日の会見で、評価の内容や手法などを、協力者会議を設置して年内をめどに検討すると表明しました。

学校への民間参入を加速

 問題のシステムは、教育産業大手のベネッセが参加し開発された「Japan e―ポートフォリオ」(JeP)というウェブサイトです。生徒がベネッセから取得したIDでログインし、「学びのデータ」として、探求活動、生徒会・委員会、学校行事、部活動、学校以外の活動、留学・海外経験、表彰・顕彰、資格・検定という項目ごとに自らのデータを蓄積し、その記録を大学に提出します。

 JePの運営は教育情報管理機構という団体ですが、サポートするのはベネッセです。高校生の蓄積した個人情報の漏えいやベネッセの事業への流用の危険性が強く疑われ、不安が広がっています。

 民間事業者は機構と提携することで、自らが提供する教育サービスで蓄積した学びのデータをJePに移行することができます。高校生に民間サービスの利用を促すシステムに他なりません。実際、ベネッセが運営するClassiというサービスは2500校、116万人に販路を広げました。

 大学入試を利用して民間の事業を学校教育に一層参入させることに、今回の入試改革の狙いがあります。萩生田文科相は、JePを「有効性があるのか疑問に思っていた」(21日の会見)と述べつつも、入試で「主体性」を評価する方向を変えようとしていません。

 そもそも生徒の「主体性」を入試で評価することに大きな問題があります。入試改革を審議した高大接続システム改革会議でも、委員から「態度を評価できるか」「非常に難しい作業」との指摘がありました。例えば、部活の部長は10点、副部長は5点、全国大会出場は40点と点数化すれば、点数のつかない生徒は主体性がないことになります。それが入試の合否につながるとなれば生徒の学びや活動は打算的になりかねません。それで主体性が育まれるでしょうか。

 生徒の入力に間違いがないかどうかなどのデータを確認する教員の労力も大変な負担です。留学には短期の場合でも数十万円の費用がかかるため、負担できない家庭の生徒は評価されないという格差を生み出します。

 大学側もJePの参加を決めたのは30校にすぎず、大多数は慎重な対応をとっています。

きっぱり中止し見直せ

 生徒の多様な学びと人間形成を支えるために求められるのは、必要な教職員を増やし、不要な業務を削減することです。入試での「主体性」評価は、これに逆行し生徒の学びをゆがめるものです。

 入試での「主体性」評価が打ちだされた出発点は、英語民間試験や記述式と同様、安倍晋三首相の私的諮問機関である教育再生実行会議です。今回の入試改革はきっぱり中止し、根本からの見直しを行うことが必要です。


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