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2020年1月9日(木)

きょうの潮流

 私たちは自分自身の「内なる偏見・差別の意識」に目を向けることを、無意識のうちに避ける傾向がつよい。なぜか。その問いは、事件の意味を考えるうえで、とても大事な視点だと思う▼障害者施設の元職員が多数の入所者を殺傷し、社会を震え上がらせてから3年半。関係者や専門家らが改めて事件の本質に迫った共著『いのちを選ばないで』の序文で、作家の柳田邦男さんがそう指摘していました▼彼らは人間ではない、生きる資格がないというメッセージを社会に伝えるために殺した―。バリアフリー研究者で全盲ろうの福島智さんは植松聖(さとし)被告と面会した際に、形容しがたい不快さ、「魂の嘔吐(おうと)感」ともいうべき感覚に襲われたといいます▼どうしてこんな事件が起きたのか、生きる権利とは、共生とは、ひとのいのちとは…。きのうの初公判。遺族や障害者だけでなく、たくさんの人びとが投げかけられた問いの答えをもとめて集まりました▼被告の問題とともに事件の背景を明らかにし、教訓にすることも裁判の焦点です。すべての国民に人権が保障され、個人として尊重される憲法をもちながら、さまざまな分野で格差が横たわる社会、それをひろげる政治。いまも偏見や差別意識をうみだす土壌になっているからです▼「美帆を覚えていて」。裁判を前に遺族が犠牲になった娘の名を公表しました。こんな悲しい事件が二度と起こらない世の中にしたいと。「障害者が安心して暮らせる社会こそが健常者も幸せな社会だと思います」


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