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2019年12月31日(火)

不安越年 台風の被災地

自宅再建見通せず 農業水路は壊滅的

宮城・丸森町

 10月の台風19号で阿武隈川支流の3河川で18カ所が決壊し、大規模な浸水被害が出た宮城県丸森町。被災した人たちからは「この冬、お正月をどう過ごせばいいのか」と不安の声が尽きません。年末の24日、現地を取材しました。(原千拓)


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(写真)泥出しを終えたものの、床板がはがれたままの状態の佐藤さんの自宅1階。左は山本明徳党町議=24日、宮城県丸森町

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(写真)再建した佐藤さんが営む柿渋染め工房=24日、宮城県丸森町

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(写真)河川の氾濫で水路が破壊された田んぼ=24日、宮城県丸森町

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 同町では台風19号による人的被害は死者10人、行方不明1人。住宅被害は、全壊113棟、半壊・一部損壊など1177棟、床上・床下浸水1073棟に上ります。6カ所に計208戸のプレハブ仮設住宅が建設され、21日から入居が始まりました。

●人間関係も一から

 丸森小学校で避難所生活を送っていた男性(66)は、同小学校近くに建設された仮設住宅への入居が決まりました。1人用の1DKで広さは約6坪。給湯器やガスコンロ、エアコン付きで、民間企業から電子レンジが提供されますが、冷蔵庫や洗濯機、テレビなどは自分で用意しなければならないといいます。

 1階建ての町営住宅で被災し、家財道具は全部処分せざるをえませんでした。男性は「人間関係も一からのスタート」と話しました。

 金山地区で柿渋染め工房を営む佐藤ゆり子さん(64)の自宅は、床上浸水しましたが1カ月後に工房を再開することができました。佐藤さんは「交通もままならない時から知人たちがボランティアに来てくれたおかげです。災害に遭っても負けない気持ちでやっていきたい」と意気込みます。

 しかし自宅の1階は泥を出したものの床板がはがれたままで再建の見通しはたっていません。佐藤さんは「自宅再建へ、お金がどのくらいかかるか心配。夫も高血圧を抱えており心配が絶えない。とにかくこの冬、お正月をどう過ごすか」と肩を落とします。

 同町の各地区の田畑の被害も深刻です。氾濫した河川や山からの土砂で田んぼに泥や砂利が堆積し、田んぼわきの水路が流されたり壊されたりしたところが多くあります。町によると公共土木や農業など被害額の合計は15日時点で400億円以上に達しています。同町の2019年度予算額約90億円をはるかに超える被害額です。

●生活取り戻すまで

 大内地区の農家で町議の宮本昭雄さん(68)の水田では、出荷はできたものの農地が流出し山からの土砂が流入しました。「山沿いや川沿いの水路が壊滅的に壊れている。2、3年は我慢しようと思っている」

 宮本さんは「トラクターなどの設備が冠水し、補助制度で再建しようという人もいるが、担い手も高齢化しているので、借金しても続けられるのか不安を持っている人もいる」と指摘します。

 11月12日告示の町議選(定数14)で無投票当選し、日本共産党の議席空白を克服した山本明徳さんは「だれ一人取り残されることなく、元の生活を取り戻せるまで力を合わせてがんばりたい」と話します。12月町議会の一般質問で、被災者に寄り添った支援を国や県に働きかけることを町当局に訴え、被災者の生活再建へ町独自の財政支援を求めました。


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