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2019年12月19日(木)

主張

ハンセン病の家族

差別除去と名誉回復に責任を

 先の臨時国会では、ハンセン病元患者の家族に最大180万円を支給する補償法が全会一致で成立し、先月末に施行されました。改正ハンセン病問題基本法も成立し、差別禁止や名誉回復などの対象に元患者の家族も加わりました。国は今後、当事者の意見をよく聞き、元患者とともに、家族への偏見と差別の除去、名誉回復に責任を持って取り組むことが求められます。

反省とおわびを明記

 補償法は前文で、国の誤ったハンセン病隔離政策の下、元患者家族が偏見と差別の中で受けた苦痛に対し、国会と政府が「悔悟と反省の念を込め」「深くおわびする」と明記しました。望んでいた家族関係を元患者との間で築くことが困難となったことなどについて国会と政府の責任を認めました。

 厚生労働省は補償の対象者数を約2万4000人としています。補償金は、元患者家族の訴訟で6月の熊本地裁判決が命じた最大130万円の賠償から上積みされ、元患者の親子や配偶者に180万円を支給します。現在、申請を受け付けており、早ければ来年1月末に支給が開始されます。

 補償額は、家族が長年受けてきた偏見や差別、回復が難しい家族関係などの実態に照らせば不十分です。ただ判決が示した賠償額を上回る補償額を決めた例はこれまでなかったとされます。

 1996年のらい予防法の廃止まで約90年続いた隔離政策によって、家族のつながりが途絶えたままの人も少なくありません。「家族の関係性を取り戻すことにつなげてほしい」と家族訴訟原告団の黄光男(ファン・グァンナム)・副団長は訴えます。

 元患者との間で家族関係を形成できず長年にわたって多大の苦痛と困難を強いられてきたにもかかわらず、その重大性を認識せず、国会と政府はなんの取り組みもしてきませんでした。黄さんをはじめ家族らの切実な声に応えるために、国は早急に制度の周知を図るべきです。

 補償法は前文で、「ハンセン病元患者家族等に対するいわれのない偏見と差別を国民と共に根絶する」決意を述べています。

 熊本地裁判決は、新聞広告やポスター、人権作文や講演会の開催をはじめ法務省などが行ってきた偏見除去の施策に一定の効果があることは認めています。問題は、その内実です。啓発活動中、福岡県の公立小学校の授業で教師が、ハンセン病は体が溶ける病気と誤った説明を行い、誤解した児童が“怖い”などと書いた感想文を、ハンセン病元患者が暮らす国立療養所菊池恵楓(けいふう)園(熊本県)に送ったこともありました。

 かつて国が行い、ハンセン病への誤解を醸成した「無らい県運動」に比べれば、これまでの啓発活動は規模も頻度も不十分だと熊本地裁判決は述べています。国はその指摘を受け止め、偏見・差別除去の対策を取る必要があります。

療養所の体制整備は急務

 ハンセン病療養所入所者の療養体制の充実も不可欠です。国会審議の中で日本共産党議員の質問に対して、政府は「体制は維持する」と答弁しました。入所者の平均年齢は85・9歳になっています。最後まで人間らしい暮らしを送れる体制整備が急務です。そのためにも介護職員の処遇改善も重要となっています。


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