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2019年12月14日(土)

米軍新基地 土砂投入1年

辺野古(進捗率)たった1%

続く抗議 工事阻む

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(写真)土砂投入が強行されて1年になる辺野古沿岸。手前の(2)工区は今年3月に土砂投入が開始されましたが、埋め立てはほとんど進んでいません=13日、沖縄県名護市(小型無人機で撮影)

 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に伴う埋め立て土砂の投入が強行されてから14日で1年となりました。安倍政権は2月24日の県民投票や7月の参院選などで示された新基地反対の圧倒的な民意を無視し、違法・無法な工事を強行し続けています。しかし、県民の粘り強いたたかいに阻まれ、沖縄県の試算で、埋め立て工事に伴う土砂投入の進捗(しんちょく)率はわずか1%にすぎません。(柳沢哲哉)

 土砂投入が行われているのは、埋め立て区域南側(辺野古側)の「(2)―1工区」と「(2)工区」です。防衛省からの回答に基づく県の試算によると、10月末時点の土砂投入量は、「(2)―1工区」が9・8万立方メートル、「(2)工区」が10・7万立方メートルで、合計20・5万立方メートルです。これは、埋め立て願書に示された両工区の必要土量319万立方メートルのうち、6・4%にすぎません。

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 さらに、北側の大浦湾側を含む、埋め立て工事全体に必要な総土量2062万立方メートルに対しては、わずか1%しか進んでいません。

 辺野古の工事に詳しい元土木技術者で沖縄平和市民連絡会の北上田毅(きたうえだ・つよし)さんは、「当初の防衛局の計画では、5年間で埋め立ては完了することになっていましたが、間もなく仲井真弘多(ひろかず)元知事の埋め立て承認から6年。このペースでは、辺野古側の埋め立てだけでも10年、全体の土砂投入が終わるまでに60年かかる」と指摘。「現地での抗議行動が工事のめどが立たない状況を生み出している。運動をさらに強化すれば新基地建設を中止させる展望がはっきり見えます。焦っているのは安倍政権です」と語ります。

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(写真)米軍キャンプ・シュワブゲート前に座り込み、「新基地建設をやめろ」と抗議する人たち=10日、沖縄県名護市辺野古

辺野古の美ら海に「基地いらぬ」

沖縄 “土砂供給源”でも怒り

 沖縄県名護市の辺野古新基地の埋め立て土砂は、採石場からダンプトラックで運ばれ、同市安和(あわ)の琉球セメント桟橋と、本部(もとぶ)町の本部港塩川地区で運搬船に積まれ、辺野古へ海上搬送されています。

 防衛省沖縄防衛局によると、埋め立て土砂の施工区域への搬入は、2018年12月から19年10月末までで運搬船のべ約430隻分になっています。

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(写真)土砂投入が強行されて1年になる辺野古沿岸=13日、沖縄県名護市(小型無人機で撮影)

 新基地建設に反対する「本部町島ぐるみ会議」は、昨年12月3日に安和の桟橋から土砂の積み出しが始まってからこの1年間、毎日、安和と塩川でダンプトラック台数などを記録してきました。

 記録によると、今年11月末時点でダンプの総台数は10万1823台になります。

 「本部町島ぐるみ会議」は、ダンプに積まれた量や作業関係者らの証言などから、1台の土砂は6トン、1台あたり3・3立方メートルと推計。ダンプの総台数から、11月末までに埋め立てに運ばれた土量は33・6万立方メートルで、埋め立て工事全体に必要な総土量2062万立方メートルのうち、1・6%程度だと指摘します。県が試算した1%と近い数字です。

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 8~10月は台風の影響もあり、ダンプの台数は減っていましたが、11月は遅れを取り戻すかのように増加。特に本部港塩川地区で急増しています。

 「本部町島ぐるみ会議」の高垣喜三さん(71)は、「土砂の供給源で水道の蛇口をしぼるように」と本部港でダンプの記録と抗議を続け、「少しずつ工事を遅らせることが全体の遅れにつながっている」といいます。「ふるさとの土と港が基地建設に使われることに耐えられない。地元の思いをぶつけていきたい」

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(写真)埋め立て土砂を運ぶダンプトラックに抗議する「本部町島ぐるみ会議」の人たち=11日、沖縄県本部町

世界に広がる連帯

 土砂投入から1年。米軍キャンプ・シュワブゲート前、海上のカヌーチーム、安和、塩川で粘り強い抗議行動が取り組まれています。ヘリ基地反対協の安次富(あしとみ)浩共同代表は、「安倍政権の思惑通りに進めさせていないのは私たちの運動の成果だ。台風の影響もあるが、それは沖縄の海を甘く見ている証拠だ」と話します。

 日本全国だけでなく、国際平和ビューローや米労組のアジア・太平洋系アメリカ人労働者連盟(APALA)との交流、ハワイ在住の青年、ロバート・カジワラさんが呼びかけた新基地工事停止を米ホワイトハウスに求める電子署名など世界に連帯が広がりました。

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 安次富さんは「各国にいるウチナーンチュも『ふるさとの海を壊さないで』と立ちあがっている。全国・世界と沖縄のたたかいを結んで運動をつくっていきたい」と語り、こう強調しました。「玉城デニー知事を支える『オール沖縄』が健在である限り、辺野古新基地は絶対にできない」

「屈しない」は沖縄の誇り

県政策参与 吉田勝廣さん

 辺野古新基地建設の現状や県の対応について、県政策参与の吉田勝廣さんに聞きました。

 土砂が投入されているのは水深が非常に浅い辺野古側ですが、県の試算でも埋め立ての進捗率は1%です。

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 防衛省沖縄防衛局が提出した設計概要の工程表では、埋め立て工事を最初に着工するのは大浦湾側でした。辺野古側の工期は、大浦湾側よりもはるかに短く、大浦湾側護岸の完成前に埋め立てが完成するとされていました。つまり、大浦湾側に着工しない限り、工事の完成に近づくことにはならないのです。

 大浦湾側は軟弱地盤の問題もあり、いまだ着工できていません。辺野古側への土砂投入は、諦めさせようという「みせしめ」だったのでしょう。

 そもそも県が行った埋め立て承認撤回により、国の工事は違法です。そのうえ、国は建設途中の護岸を土砂陸揚げのための“桟橋”とする目的外使用や、フロート(浮具)を固定するため海底に設置したアンカーで海草藻場やサンゴ類を損傷させるといった環境保全措置の不備など、無法を重ねてきました。これに対し、県はその都度、行政指導をしています。

 今後も土砂の赤土混入の問題や、サンゴの移植、軟弱地盤改良による設計変更申請などに対し、毅然(きぜん)と対応していかなければなりません。県外の埋め立て土砂採取地の外来生物調査も実施します。

 玉城デニー県政は翁長雄志前県政同様、あらゆる手段で新基地建設を阻止する方針ですが、有識者を集めるなどして、もう一度「あらゆる手段」を総点検することも必要です。

 辺野古新基地建設が浮上して20年以上になります。この間、国際情勢は大きく変化しているにもかかわらず、辺野古新基地だけが時代に取り残されたかのように続いてきました。新基地が本当に必要なのかといった根本的な論議が必要です。

 県民は新基地反対で結束してたたかっています。日米両政府の圧政に対抗する言葉が「諦めない」「屈しない」。それは沖縄の歴史、先人から学んだ沖縄の誇りであり、何よりも強いものです。

 国政野党の党首らが辺野古の現場を視察し、7月の参院選では新基地建設反対が野党の共通政策になるという大きな変化が起きました。全国的な新基地反対の広がりを感じています。現場のたたかいと呼応し、国会とも連携して新基地建設を止めるため全力を尽くします。


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