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2019年11月26日(火)

日本民主青年同盟 第43回全国大会

21世紀の世界をどうとらえ、どうたたかうか

志位委員長の講演(要旨)

 日本共産党の志位和夫委員長は23日、日本民主青年同盟第43回全国大会で「21世紀の世界をどうとらえ、どうたたかうか」と題して党綱領一部改定案について講演しました。一部改定案が示す新しい世界論と未来社会の展望を学んだ参加者からは「社会進歩のために活動できることに喜びとやりがいを感じた」「すごくすてきな綱領。もっとまわりに広げたい」などの感想が相次ぎました。講演の要旨を紹介します。


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(写真)講演する志位和夫委員長=23日、東京都渋谷区

断面でなく、長いスケールで大局的な流れをつかもう

 「一部改定案の根本的立場は、一言でいうと、『20世紀に進行した人類史の巨大な変化の分析にたって、21世紀の世界の発展的な展望をとらえる』ということです」。こう切り出した志位氏は、大局的に世界の流れをつかむことの重要性を強調しました。

 「世界の動きはたいへん複雑で、日々起こってくる出来事だけを見ると、暗いニュースが多い。戦争、テロ、人権侵害……胸の痛くなる話の連続で、世界は悪い方向に向かっているようにも見えます。しかし、断面だけでなく、長いスケールで大局的な流れをつかむと、違った世界の姿が見えてきます。さまざまな曲折や逆行をへながらも、人類は着実に進歩の歩みを刻んでいます。そして人類の進歩の原動力は、各国の草の根の人民のたたかいにあります。一部改定案は、『人民のたたかいが歴史をつくる』という科学的社会主義、史的唯物論の立場で世界論を発展させました。今の日本のたたかいを、確信をもって前進させるうえでも、世界の大局的な流れをつかむことが大切です」

21世紀の世界をとらえる土台は「20世紀論」にある

 志位氏は、21世紀の世界をとらえる土台は、「20世紀とはどんな世紀だったか」=20世紀論にあると述べました。

 20世紀は「戦争の世紀」とも言われますが、1世紀という単位で見ると、「人類史の上でも画期をなす巨大な変化」――植民地体制の崩壊、国民主権の民主主義、平和の国際秩序が進行した世紀でした。志位氏は、それぞれを歴史的に振り返りました。

 植民地体制の崩壊――20世紀初頭は、少数の帝国主義国が全世界を分割支配していました。1899年にオランダ・ハーグで開かれた「万国平和会議」は、「万国」といっても招待国はわずか26カ国(欧州と北米で20、アジアは5〔日、清、シャム[現在のタイ]、ペルシャ[現在のイラン]、オスマン・トルコ〕、ラテンアメリカは1〔メキシコ〕、アフリカはゼロ)。ところが第2次世界大戦後、植民地体制が世界的規模で崩壊し、現在、国連加盟国は193カ国に達しています。

 国民主権の民主主義の発展――20世紀初頭、主権在君が世界の主流でしたが、現在、国連加盟193カ国のうち、君主制の国は30程度。それらの国ぐにでも多くの国では政治の実態は国民主権になっています。

 平和の国際秩序の発展――20世紀初頭、戦争は国家の合法的権利とされ、「弱肉強食」「切り取り勝手」の戦国時代のような世界でした。第1次世界大戦をへてパリ不戦条約(1928年)で戦争が違法化。第2次世界大戦をへて制定された国連憲章(45年)では「武力による威嚇又は武力の行使」を厳しく禁止し、2003年のイラク戦争では「国連憲章にもとづく平和秩序」が世界的スローガンになりました。

 志位氏は、一部改定案では20世紀に起こった世界的な変化の内容の補強として、人権の擁護・発展を「国際的な課題」と規定するとともに、植民地体制の崩壊のもつ意義を「世界の構造変化」と特記したと説明。「日本共産党は党をつくって97年、民青同盟のみなさんは、戦前の共青の時代から数えると96年です。私たちの歴史は、20世紀の人類史の偉大な進歩の不滅の一部になっていることに誇りをもって、21世紀のたたかいにのぞもうではありませんか」と呼びかけると、大きな拍手がおきました。

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(写真)志位和夫委員長の講演を聞く民青全国大会の参加者=23日、東京都渋谷区

中国への批判は世界の平和と進歩にとって大義あるとりくみ

 現綱領で中国などを、「社会主義をめざす新しい探究が開始」され、「21世紀の世界史の重要な流れの一つになろうとしている」と規定した部分を削除する今回の一部改定案の説明には、参加者から「歴史的背景がよくわかった」など感想が多く寄せられました。

 中国がGDP(国内総生産)で米国に次ぐ「経済大国」になった2008~09年ごろから、中国の国際政治における動向にいろいろな問題点があらわれてきます。日本共産党は14年の党大会決議で「覇権主義や大国主義が再現される危険もある」と「警告」し、17年の党大会決議で「新しい大国主義・覇権主義のあらわれ」について「踏み込んだ批判」を行い、是正を求めてきたが、中国の指導勢力は是正どころか事態を深刻にする行動をとってきた――こうした経過を報告したうえで志位氏は、「どれも社会主義の原則や理念と両立できない行動です。中国について『社会主義をめざす新しい探究が開始』された国と判断する根拠は、もはやなくなりました」と規定削除の理由を説明しました。

 では、なぜこんなことが起こっているのか。志位氏は、根本的な問題として中国がおかれた歴史的条件を2点指摘しました。

 一つは、自由と民主主義の制度、思想や文化が十分に存在しないもとで、革命戦争によって政権を握り、革命後もソ連式「一党体制」が持ち込まれ、民主主義を発展させる措置がとられなかった問題です。「文化大革命(文革)」を総括した中国共産党の1981年の決定では、「中国は封建制の歴史の非常に長い国である。…長期にわたる封建的専制主義の、思想・政治面における害毒は、やはり簡単に一掃しうるものではなかった」と自戒しましたが、その総括をまとめた鄧小平自身が89年に天安門での市民弾圧を強行しました。中国の現状は、自戒していた歴史的弱点があらわれたものにほかなりません。

 もう一つは、中国の大国主義の歴史です。これについても56年に人民日報に掲載された「重要論文」で、「われわれ中国人は、わが国が漢、唐、明、清の4代とも大帝国だったことを特に心に留めておく必要がある。…大国主義の傾向は、もし極力これを防ぎ留めなかったなら、必ず重大な危機となるであろう」と自戒していましたが、その後も覇権主義の誤りは毛沢東によって行われ、今日の習近平指導部によって繰り返されています。

 こうした中国にかかわる綱領改定について志位氏は、日本共産党を中国共産党と同一視する誤解・偏見をとくという次元にとどまらず、「世界の平和と進歩にとって大義があるとりくみです」と強調。安倍首相が、中国を「戦争する国づくり」に利用することはあっても香港問題で中国政府を批判せず、米国、ロシアの覇権主義の対応と同じく卑屈な屈従外交を行っていることを批判し、「日本共産党はどんな大国の言いなりにもならず、自主独立を貫いてきた党として国際的責任を果たします」と表明しました。

21世紀の世界をどうとらえるか(1)

世界の構造変化が生きた力を発揮

 一部改定案は、21世紀の世界の発展的な展望を“二つの角度”からありのままにとらえています。

 その第一の角度は、20世紀に起こった「世界の構造変化」が平和と社会進歩を促進する生きた力を発揮し始めていることです。21世紀の世界の特徴は、一握りの大国から、世界のすべての国ぐにと市民社会に国際政治の主役が交代したことにあります。

 志位氏は、核兵器禁止条約の国連会議、東南アジア諸国連合(ASEAN)など平和の地域協力の流れ、国際的な人権保障の新たな発展を紹介。豊富なエピソードを交えながら、国連会議で小さな国が大きな存在感を発揮し、途上国が国際政治の一員となったことが先進国を含めた世界全体の発展を促すなど、「主役交代」を示すダイナミックなプロセスが進行していることを明らかにしました。

 このなかで志位氏は、一部改定案に明記した「ジェンダー平等社会」の国際的到達と意義について詳しく述べました。

 2015年の国連総会で193カ国の全会一致で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)は、2030年までに世界が達成をめざす17の目標を決め、その5番目に「ジェンダー平等の実現」が掲げられ、「ジェンダー平等はすべての目標達成のカギ」と位置づけられました。これについて国連は、「貧困をなくそう。ジェンダー不平等によって、女性の貧困状態は悪化し、よりよい生活への権利や機会が奪われています。貧困に終止符を打つことは、ジェンダーに基づく差別をなくすことではじめて達成しうる目標です」「働きがいも経済成長も。ジェンダーステレオタイプによって『女性の仕事』が決められ、女性が劣悪な仕事に従事させられることにつながっています」などと、17の目標達成のうえでジェンダー平等が重要なカギとなっていると説明しています。

 志位氏は、「ジェンダー平等は、あれこれの課題の一つでなく、世界の平和と進歩の全体にとって大きな柱に据えるべき課題です」と述べ、ジェンダー平等社会の実現を綱領一部改定案に明記した意義を強調。性暴力のない社会を求めるフラワーデモに自身も参加したことを語りながら、「性暴力被害にあったつらい過去を声に出して語ることで、未来をとりもどし、自分の尊厳をとりもどす場になっていると感じました。世界でも、日本でも、ジェンダー平等をめざし、あらゆる差別をなくし、性暴力をなくし、誰もが尊厳をもって自分らしく生きることのできる社会を目指す運動がひろがっていることは、人類の歴史的進歩を象徴する出来事ではないでしょうか。21世紀は、国際的人権保障という点でも、豊かな発展が開花する時代となっています。すべての個人が尊厳をもって生きることのできる日本と世界をつくるためにがんばりましょう」と呼びかけました。

21世紀の世界をどうとらえるか(2)

世界資本主義の諸矛盾から

 第二の角度は、世界資本主義の諸矛盾から、21世紀の世界をとらえるということです。

 志位氏は、世界資本主義の諸矛盾のなかでも、世界的に大問題になっている貧富の格差の拡大、地球的規模での気候変動の問題を一部改定案で特記した意義を強調したうえで、次のように語りました。

 「これらは資本主義の枠内でもその是正・抑制のための緊急で最大のとりくみが必要です。そうしてもなお抑制ができないとなれば、資本主義というシステム全体を根本から変革することが求められるでしょう」と提起。「利潤第一主義」を原理とする資本主義のもとでは、生産のための生産が行われ、大量生産・大量消費・大量廃棄などきわだった「浪費型の経済」となり、この体制のもとでは、エネルギーの浪費も避けられないという問題を指摘しました。

 そのうえで「社会主義的変革――生産手段の社会化によって、生産の目的が『利潤第一主義』という狭い枠組みから解放されて、社会を構成する人々の物質的・精神的な発展に移されるならば、『浪費的な部分』は一掃されるでしょう。そういう方向にこそ、気候変動の問題でも根本的解決の方向があるのではないでしょうか」と展望を語りました。

今のたたかいは、そのすべてが未来社会を根本的に準備する

 志位氏は、一部改定案で「発達した資本主義国での社会変革は、社会主義・共産主義への大道である」と明記していることにかかわって、その「特別の困難性」と「豊かで壮大な可能性」について詳しく解明しました。ここは、「今の私たちのたたかいが、すでに未来社会実現の土台を築いていることがよくわかった」(千葉県・男性)など参加者から大きな反響が寄せられた部分です。

 一部改定案は「資本主義の高度な発展そのものが、その胎内に、未来社会に進むさまざまな客観的条件、主体的条件をつくりだす」として、(1)高度な生産力(2)経済を社会的に規制・管理するしくみ(3)国民の生活と権利を守るルール(4)自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験(5)人間の豊かな個性――という五つの要素を列挙しています。

 この五つの要素について志位氏は、「このなかには資本主義の高度な発展が必然的につくりだす要素もありますが、人民のたたかいによって初めて現実のものとなる要素もあります」と指摘。たとえば、労働時間の短縮、社会保障の充実、学費の無償化、ジェンダー平等など「国民の生活と権利を守るルール」は、自動的につくられるものではなく、たたかってこそ現実のものとなります。「自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験」も、自由と民主主義を守り、発展させる国民のたたかいの歴史的経験を積み重ねてこそ、未来社会に確実に引き継がれ、発展させることができます。さらに、「人間の豊かな個性」の発展についても、資本主義社会のもとで自動的に進行するものではありません。すべての人が生まれながらにして平等だという民主主義の感覚、個人の尊厳が何よりも大切だとする人権の感覚、国民こそが国の主人公であるという主権者意識などは、人間に最初からそなわっていたのではなく、人民のたたかいによって歴史的に形成されてきたものでした。志位氏は熱く訴えました。

 「今のたたかいは、未来社会と地続きでつながっています。そのすべてが未来社会を根本的に準備します。こういう大志とロマンのなかに現在のたたかいを位置づけ、たたかいの大きな前進をかちとろうではありませんか。発達した資本主義国での社会主義的変革は、まだ誰も歩んだことがない、人類未到の道の探求。そこには『特別の困難』もありますが、はかりしれない『豊かで壮大な可能性』があります」

改定案の新しい世界論を、日本のたたかいを前進させる力に

 最後に志位氏は、一部改定案が示す新しい世界論は、「決して『遠い世界』の話ではなく、今の日本のたたかいに直結しています」と述べました。

 核兵器のない世界、ジェンダー平等、貧富の格差の是正、気候変動の抑制、中国をどうみるかなどは、世界にとって大問題であるだけでなく、日本国民にとっても強い関心が寄せられている大問題であり、「こうした諸問題を、世界の大局的な流れのなかでつかむことは、今日の日本のたたかいを確信をもって前進させる大きな力になることは間違いありません」と訴えました。

 そして、「ぜひ綱領一部改定案が示す新しい世界論を、今の日本のたたかい、若いみなさんのたたかいを前進させる生きた力にしていただきたい。野党連合政権の実現、日本共産党の躍進、強く大きな民青同盟をつくる。そのためにも、一部改定案を含む日本共産党綱領を、学び、大いに語り、日本のたたかいを世界的視野にたって前進させる糧にしていただきたい」と講演を締めくくると、大きな拍手がおきました。


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