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2019年11月26日(火)

主張

矛盾深めるリニア

建設ありきの足元崩れている

 JR東海のリニア中央新幹線工事をめぐり、各地で矛盾が顕在化しています。静岡県では工事が大井川の流量減少を引き起こすことに県が反発を強め、着工のめどがたっていません。岐阜県では土砂崩れの発生で工事が中断した現場もあります。大量に発生する残土の置き場問題もほとんどが未解決です。しかし、JR東海は2027年開業(東京・品川―名古屋間)ありきで強引に工事を急ぐ方針を変えようとしません。そもそもリニア計画自体が環境破壊や採算面などで重大問題があると批判が絶えません。このまま突き進むことは未来に禍根を残すだけです。

水量減少に批判強まる

 リニア中央新幹線は、JR東海が事業主体となり品川―名古屋に続き、37年には大阪までの延伸開業をめざす総額9兆円にのぼる超巨大開発です。安倍晋三政権は14年に計画を認可し、16年に建設を加速させるため財政投融資として公的資金3兆円を投じることを決めました。文字通り「国家的プロジェクト」という位置づけです。

 これだけの巨費を投じてリニアを建設することには、根本的な疑念が突き付けられています。自然環境の破壊、沿線住民の生活被害、人口減少が見込まれる中で採算見通しがないことなど深刻な問題も置き去りのままです。住民や自治体の懸念や不安にこたえないJR東海と政府の姿勢は重大です。

 一方、強引なやり方は矛盾を拡大しています。その一つが、大井川の水量が減少する問題です。静岡県のリニア区間(8・9キロ)は全て南アルプスの下を貫くトンネルになる計画です。工事が大井川の水源に打撃を与え、流量が大幅に減少することはかねて問題になってきましたが、JR東海は有効な対策方針を示していません。同社は水を川に戻す方針などを示しましたが、その説明も二転三転するなどしているため、県や住民の怒りを招いています。

 流域住民60万人以上の生活・産業を支える大井川の流量が大きく減少すれば、極めて深刻な影響を及ぼすことは必至です。川勝平太静岡県知事は、水問題が解決しない限り本格着工を認めないと表明しています。「27年開業に黄信号」と言われはじめて国土交通省は調整に動きだしました。しかし、建設推進を前提にした調整のため、地元の批判は強まるばかりです。

 もともとリニア計画は、環境相の環境影響評価への意見(14年6月)で、「河川の生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い」「事業の実施に伴う環境影響は枚挙にいとまがない」などと警告をしていたものです。JR東海はこの指摘を受け止めようとせず、政府も同社の姿勢を改めさせようとしていません。南アルプスの水源をはじめ貴重な自然環境は、一たび壊されれば元に戻すことは極めて困難です。環境破壊が現実の危険になっている以上、リニア建設の根本的な見直しは不可欠です。

立ち止まって見直すとき

 用地取得も難航している地域があります。残土置き場問題も依然決着していません。岐阜県中津川市の中央アルプストンネル非常口工事の土砂崩落(4月)は、地質にかかわる事故とされており、徹底究明が必要です。噴出する問題は工事の足元を揺るがすものです。今こそ立ち止まり、リニアの是非を含め、国民的議論をする時です。


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