しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年11月21日(木)

きょうの潮流

 そのチョウの英名は「グレート・パープル・エンペラー」。紫紺の羽、里山に咲く黄と白の花を思わせる幾多の紋。それらを刻みつけた屈強な黒い羽形―。動植物写真家の栗田貞多男さんはオオムラサキを里山の象徴だといいます▼四季の移ろいとともに成長し、格調高く宙を舞う。自分のテリトリーを侵すものはツバメやスズメでさえも追いかける、誇り高きチョウといわれています。60年ほど前から日本昆虫学会によって国蝶(こくちょう)にも選ばれています▼野山にきらめく、その宝石たちが急激に減っていることが全国の定点調査でわかりました。自然保護協会によると身近にみられてきた87種のうち、およそ4割が絶滅危惧種に相当するほど減っていると▼ほかにもハシブトガラスやヒヨドリなどの鳥類、ノウサギやテンといった哺乳類も年々減少傾向にあります。大きな要因にあげられているのが里山の劣化です。ゆたかな恵みをあたえ、多様な生物をはぐくんできた地が開発によって破壊されたり、手入れが行き届かなくなったり▼適度に人の手が入った里山は種の宝庫。そこは生存の場であり、人と自然が共生する場にもなってきました。荒れる背景には各地で深刻な過疎化が横たわっています。里山の衰退は私たちの生活環境の悪化にもつながっているのです▼保全活動の現状は市民やNPOの自主的な運動頼み。地方を疲弊させ自然を壊してきた国の責任は大きい。いま列島の山々は錦秋の紅葉に染まります。そこに息づく命の尊さとともに。


pageup