しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年11月21日(木)

主張

「思いやり」増額

対米追従が法外な要求招いた

 在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)をめぐり、トランプ米政権が日本政府に対し、現状の4倍を超える年約80億ドル(約8640億円)への増額を要求していたことが報じられました。来年の米大統領選を見据え、交渉の主導権を握り譲歩を引き出すトランプ氏独特の「ディール」(取引)だという指摘があるものの、大幅増額につながる危険があります。途方もない要求を突き付けられること自体、安倍晋三政権がみくびられていることを示しています。安倍政権の対米追従外交が招いた深刻な事態です。

安倍政権を狙い撃ち

 「思いやり予算」の法外な増額要求は、7月に当時のボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が来日した際に伝えられたとされます。ボルトン氏は、当時の河野太郎外相や岩屋毅防衛相、谷内正太郎国家安全保障局長と個別に会談していました。

 安倍政権はトランプ政権の増額要求について「(そうした)事実関係はない」(河野太郎防衛相、今月17日)と否定しています。しかし、「アメリカ・ファースト(米国第一)」を掲げるトランプ氏は米軍の海外駐留費を軽減するため日本や韓国、北大西洋条約機構(NATO)加盟国などの同盟・友好国に公然と負担増を迫っています。

 今月1日の米ミシシッピ州での選挙集会でも、トランプ氏は、裕福な同盟国を防衛するために米国民の負担で米軍を駐留させていると不満を示し、「これらの国は金を払わなければならない」と強調しています。しかも、トランプ氏はこの時、安倍首相との会談にも言及し、「日本の首相には大きな敬意を抱いているが、首相に『長年どうやってこのこと(駐留経費の支払い)から逃げ切れたんだ』と尋ねたら、彼はちゃんと答えられなかった」と述べました。

 安倍政権はこれまでもトランプ氏の言われるままに、もともとは「防衛力整備計画」に入っていなかった陸上配備型ミサイル迎撃システム(イージス・アショア)や、105機もの最新鋭ステルス戦闘機F35など、超高額な米国製兵器の大量購入を決めています。

 現在、国会で審議中の日米貿易協定でも、米国産農産物は関税を撤廃・削減するのに、日本製自動車の関税撤廃は見送るという一方的な譲歩をしています。トランプ氏べったりの安倍首相が米軍駐留経費負担の大幅増額でも狙い撃ちされているのは明らかです。

 米軍基地の日本人従業員の労務費や施設整備費などからなる「思いやり予算」は、2019年度予算で1974億円に上ります。このほか、沖縄県の辺野古米軍新基地建設など「米軍再編関係経費」1679億円や、「SACO(沖縄に関する特別行動委員会)関係経費」256億円も計上しています。これらは、在日米軍の維持経費を「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と明記した日米地位協定に反するものです。

増額ではなく廃止を

 もともと在日米軍は、「海兵遠征軍」や「空母打撃群」などの海外遠征部隊であり、「日本防衛」を任務にしていません。来春には21年度以降の「思いやり予算」に関する特別協定の日米交渉が本格化します。「思いやり予算」は廃止が当然であり、大幅な増額を受け入れる道理はどこにもありません。


pageup