しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年10月28日(月)

“免除ないとバイト漬け”

国立大授業料減免 安倍政権が予算減らす危険

 消費税増税分を財源とする高等教育の修学支援新制度が来年4月から導入されます。これまで各国立大学が独自に行ってきた授業料免除制度への予算を安倍政権は減らす危険があります。来年度以降の入学者からは廃止する方針です。免除を受けている学生から「これまでの水準維持を」の声があがっています。(学生は仮名、染矢ゆう子)


 長野県の信州大学に通う2年生の高田哲さん(19)は、これまで年53万5800円の授業料の全額が免除されていました。両親の収入は400万円程度。同大では年収550万円程度までの世帯は全額免除が認められてきました。

 新制度では全額免除は住民税非課税世帯(年収270万円未満)に限られます。同300万円までは3分の2免除。同380万円未満は3分の1免除となります。高田さんは対象になりません。

 高田さんは1年生のとき申請を忘れ、授業料は免除されませんでした。仕送りはなく、1人暮らしの家賃を含めた生活費を奨学金とアルバイトでまかないました。週6日、午後5時から11時まで週40時間近くアルバイトし、講義中に眠る生活。夜に寝つけない睡眠障害になりました。

 2年生から免除が認められ、月5万円の仕送りをもらえることになり、アルバイトを週2日に減らすことができました。「授業に集中でき、行きたかったボランティアの時間もとれるようになりました。授業料免除がなかったころの生活に戻ることはできません」

 200億円あれば現行制度の水準を維持することは十分可能です。高田さんは話します。「1機100億円以上するF35戦闘機105機とかいらないものに国はお金をかけています。授業料免除の予算を減らすのはおかしい」

増税のうえ予算減か

利用者の5割 減額かゼロ

 日本共産党の山添拓参院議員の調査によれば、信州大学では授業料減免を受けている1002人のうち550人の支援が縮小。うち179人は支援がゼロになります。

 これまで全額免除が認められていた同大1年生の大山祐太さん(19)は母子家庭です。母親は正社員のため、新制度では支援が受けられなくなる可能性があります。「全額免除が認められて母親は“大分楽になる”と大喜びしていました。弟は小学生です。これからお金がかかります。免除がなくなれば仕送りが減るかもしれません。“お金がないから国立で”と母からは言われてきました。国立大の授業料免除が縮小されると、弟を含め、これから入学する人の大学進学のハードルが上がってしまう」

進学あきらめも

 福岡県飯塚市にある九州工業大学3年生の北野圭さん(21)。これまでは年間授業料の半額、26万7900円が免除されていました。

 新制度の対象になるかどうかが分かる日本学生支援機構のホームページにある「進学資金シミュレーター」に家族の人数や世帯収入を入力すると、北野さんは免除を受けられないと出ました。

 「勉強が忙しく、通学に往復で3時間以上かかるのでアルバイトはできません。4月から大学の近くで一人暮らしを始める予定です。来年、半額免除が利用できなければ奨学金を借りる額を増やすしかありません」

 北野さんの父は病院勤務、母は北野さんが大学入学時にパートを週3日から5日に増やしましたが家計はギリギリ。進学のための母の貯金は4年間で底をつく見込みです。大学院に進学予定の北野さん。家族からは大学院の授業料や生活費はすべて奨学金でまかなうよう言われています。

 「これからの日本の科学技術を支えていくのは自分たちだと自負をもって研究しています。“お金がないから”と院に進まない学生もいます。消費税を増税したうえ、学生への予算を減らさないでほしい。院生への予算も増やしてほしい」

 国立大学の授業料減免制度は1972年、それまで1万2000円だった授業料を3倍化した際の代替措置として2倍に拡充された歴史があります。免除制度の2分の1以上の縮小は値上げの時の代替措置をほごにするものです。

学費の値上げに

 2019年度の国立大学の学生の減免予算は約250億円。全国立大の学生の12%(4万5000人)が授業料免除や減額の制度を利用しています。文部科学省の調査によれば、新制度への移行でそのうちの53%、2万4000人の支援がゼロ、もしくは減額になります。(表参照

 東京大学では、世帯年収400万円までの学生の授業料は全額免除されています。日本共産党の宮本徹衆院議員の調査によれば、同大学部学生の減免制度の財源はすべて文科省が措置する運営費交付金です。ある国立大学では、国の予算がなくなった場合、これまでの免除制度を維持するためには新たに2億円以上が必要だといいます。

 支援の対象外になったり、支援額が減少する学生について国は「いかなる対応が可能か、来年の制度施行に間に合うよう、早急に検討する」(安倍晋三首相)としています。しかし、運営費交付金が維持されなければ、大学が自腹を切ることになり、学費値上げにつながる可能性もあります。

 安倍政権は来年度以降に入学する学生には新制度のみにしようとしています。日本共産党の畑野君枝衆院議員はいいます。「来年度以降の新入生にもきちんと予算をつけて、これまでの減免水準を維持すべきです」

来年度以降含め減免水準維持を

FREEが署名開始

 高等教育無償化プロジェクト「FREE」は現行の授業料減免の対象と規模を、来年度以降の入学者を含め維持する措置をとるよう安倍首相に求める緊急ネット署名を10月から始めています。18日は文科省に要請。25日は国会前で訴えました。

 全国の大学で授業料減免の水準維持と学費値上げを行わないことを求めて、各学長あてに署名を集めようと呼びかけています。

図:国立大での新制度と現行の授業料免除の比較イメージ

pageup