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2019年10月25日(金)

主張

戦没者の遺骨収集

取り違え放置に反省あるのか

 第2次世界大戦後に、シベリアに抑留された旧日本軍兵士などの遺骨に取り違えの可能性があることが明らかになり、厚生労働省の戦没者遺骨収集事業に対する不信が高まっています。国民の批判を受けて同省は、遺骨鑑定の経過などを調べる専門家チームを発足させましたが、対応が遅すぎます。遺骨が日本人のものでないという疑惑はかねて指摘されていたのに、放置してきた厚労省の姿勢がきびしく問われます。

14年間も表に出されず

 シベリア抑留では約5万5千人が死亡したとされますが、正確な人数は不明です。遺骨が回収できたのは、約2万1900人分にすぎません。ロシアから持ち帰った遺骨のなかに日本人のものでない可能性のあることが、7月の報道で明らかになりました。当初、事実確認の動きが鈍かった厚労省は、真相解明を求める声が広がるなか、597人分の遺骨が日本人のものでない可能性があることを9月に公表しました。

 取り違えが疑われる遺骨は、1999年から2014年にかけて、ロシアのハバロフスク地方やイルクーツク州など9カ所の埋葬地で発掘されたものです。厚労省が過去の記録を検証したところ、DNA型の鑑定結果などを確認する日本の専門家の会議では、05年5月から今年3月にかけて、日本人でない可能性があると再三指摘されていたことが分かりました。最初指摘された05年から14年もたっています。なぜ長年にわたり表に出されず、放置されてきたのか、原因の徹底究明と責任の明確化は不可欠です。

 これまでも、厚労省の委託で日本のNPO法人がフィリピンで収集した遺骨の一部に、日本人以外の骨が混入していると問題になり、10年から18年まで収集事業が中断したこともあります。

 そもそも遺骨の取り違えなどあってはなりません。それが繰り返されただけでなく、隠し続けられてきたことは、問題の根深さを浮き彫りにしています。厚労省は今月、経過を調べる「調査チーム」などをスタートさせ、検証を始めました。遺骨収集事業の根幹にかかわる事態を引き起こした構造的な体質にまでメスを入れなければ、再発防止はできません。

 政府が第2次世界大戦中に海外などで死亡した日本人戦没者の遺骨収集を始めたのは、1952年です。戦没者約240万人のうち約127万6千人の遺骨を収集しましたが、残る遺骨は約112万4千人にのぼっています。

 2016年に全会一致で成立した戦没者遺骨収集推進法は、国内外の遺骨を送還し、「戦没者の遺族に引き渡すこと」を「国の責務」と明記しています。同法は16~24年度を「集中実施期間」に決め、収集を「計画的かつ効果的に」すすめるとしています。安倍晋三政権は真剣に取り組むべきです。

迅速化へ抜本見直しを

 捕虜の早期送還という国際法規に反したロシア側(旧ソ連)に責任を果たさせるため日ロ共同事業にすることなど、日本政府が主導性を発揮することを、シベリア抑留者支援の団体は求めています。

 戦後74年がたち、遺族が高齢化し、遺骨収集と鑑定はいよいよ難しくなっています。迅速にすすめるためにも、遺骨収集事業の抜本的な見直しが必要です。


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