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2019年10月18日(金)

主張

オスプレイ事故

容疑者不詳の異常事態ただせ

 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが沖縄県名護市安部に墜落した事故で容疑者である事故機の機長が氏名不詳のまま書類送検され、不起訴の可能性が高まっています。こうした中、沖縄県議会は日米地位協定の抜本的改定を求める意見書を全会一致で可決しました(15日)。意見書は、米軍が機長の氏名を明らかにせず、乗組員の聴取などにも応じず、捜査が不十分な状況で終結したことを「不平等な地位協定に起因する」と批判しました。米軍に治外法権的特権を与え、日本の主権を著しく侵害している異常事態を一刻も早くただすことが必要です。

日本政府の弱腰な姿勢

 米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属のオスプレイが名護市安部海岸の浅瀬に墜落、大破したのは2016年12月です。もし住宅地に墜落すれば大惨事につながりかねない深刻な事故でした。今年12月の時効成立を前に、管轄の中城(なかぐすく)海上保安部が先月24日、当時搭乗していた機長を氏名不詳のまま、航空危険行為処罰法違反容疑で那覇地方検察庁に書類送検していました。

 具体的には、事故機の機長が空中給油訓練に当たって、適切な速度を保持するという業務上の注意義務を怠り、自機のプロペラを空中給油機KC130の給油装置に接触させて損傷させ、その後、着水によって機体を破壊させたというものです。

 米軍は、事故原因を機長の操縦ミスとする調査報告書を提出したものの、氏名や所属は伏せられました。機長を含む乗組員への聴取の求めにも応じず、事故発生直後から現場周辺を規制し、証拠の機体も回収したため、捜査は尽くされないまま終わりました。

 同じような事態は、04年8月に普天間基地に配備されていた大型輸送ヘリCH53が沖縄国際大学(宜野湾市)に墜落した事故や、17年10月に同基地所属のCH53が沖縄県東村高江の牧草地に不時着、炎上した事故の際にも繰り返されてきました。

 在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定は、公務中の犯罪について米側に第1次裁判権があると規定するなど、さまざまな特権を保障しています。しかし、そうした地位協定であっても、必要な捜査や証拠の収集・提出については日米の当局が相互に援助しなければならないとしています。米軍が捜査に協力せず、機長の名前や所属すら明らかにしなかったのは、地位協定違反に他なりません。これに抗議しない日本政府の姿勢は重大です。

 一方で、地位協定に関する日米の了解事項を記録した「合意議事録」には、米側が同意しない限り、日本の当局は米軍財産の捜索、差し押さえ、検証ができないことを定めています。米軍機事故に関する日米両政府のガイドラインでは、事故現場周辺への立ち入りに米側の同意が必要としています。

地位協定の抜本改定を

 沖縄県は、日米地位協定を改定し、事故現場周辺の統制を日本側が行うことや、米軍財産の捜索、差し押さえ、検証ができるようにすることを求めています。県議会の意見書は、航空法など国内法を米軍に適用するよう要請しています。独立国としてあまりにも当然の要求であり、沖縄だけにとどまらない切実な全国的課題です。


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