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2019年10月9日(水)

安倍首相の所信表明に対する志位委員長の代表質問

 日本共産党の志位和夫委員長が8日の衆院本会議で行った、安倍晋三首相の所信表明演説に対する代表質問は次のとおりです。


写真

(写真)代表質問に立つ志位和夫委員長=8日、衆院本会議

台風・豪雨災害――「住み続けられる街への復興支援」の声にこたえ公的支援強化を

 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。

 冒頭、この間の台風・豪雨災害で被災された方々に心からのお見舞いを申し上げます。

 私は、先日、台風15号で大きな被害を受けた千葉県南部の自治体にうかがい、市長さんたちから要望をお聞きしてきました。共通して出された要望は、館山市の金丸(謙一)市長の言葉を借りますと、「住み続けられる街への復興支援を」ということでした。

 住宅被害は大きなものがあります。南房総市の石井(裕)市長は、「一部損壊への補助はありがたいが、6割から8割もの自己負担がある。負担できず『住宅難民』になってしまうことが心配だ」と言われていました。

 農林水産業も大きな被害が出ています。一定の支援制度が発動されますが、自己負担が重くのしかかります。過疎、離農、廃業が進むのではないか。これが一番の不安として語られました。

 「住み続けられる街への復興支援を」――これは全国で災害にあった地域の共通の声だと思います。この声にこたえて、現行の支援の枠組みにとらわれず、公的支援の抜本的強化をはかるべきだと考えます。総理の見解を求めます。

消費税の廃止をめざし、緊急に5%への減税を

 消費税問題について質問します。

 10月1日、安倍政権が消費税10%への大増税を強行したことに対し、「とても暮らしていけない」という怨嗟(えんさ)の声が全国で広がっています。私は、暮らしも、景気も、経済も壊すこの暴挙に対し、強い憤りをもって抗議するものです。

 そもそも消費税は、所得の少ない人に重くのしかかる逆進性を宿命とする弱いものいじめの税金です。こんな税金を、日本の税金の中心にすえて、どんどん引き上げる道を進んでいいのか。

 今年は、消費税が導入されて31年目になります。この税金が日本に何をもたらしたか。私は、まずこの根本問題について、総理の基本認識をただしたいと思います。

導入から31年(1)――消費税は一体何のための税金か

 第一は、消費税は、一体何のための税金かという問題です。

 政府は「社会保障のため」と繰り返してきました。しかし、この31年間、年金は減らされ、サラリーマンの医療費窓口負担は3倍になり、介護保険は負担あって介護なし、社会保障は切り下げの連続ではないですか。

 政府は「財政再建のため」と繰り返してきました。しかし、この31年間、国と地方の借金は246兆円から1069兆円へと4倍以上に膨れ上がっています。どう説明されますか。総理、政府の言い分はどちらもウソだったではありませんか。

 この31年間の消費税収は397兆円ですが、同時期に法人3税の税収は298兆円減り、所得税・住民税の税収も275兆円減りました。大企業と富裕層への減税が繰り返されたのに加えて、消費税増税がもたらした経済の低迷が税収を減らした結果です。

 結局、弱者から吸い上げ、大企業と富裕層をうるおす――これこそが消費税の正体であることは、31年間の現実ですっかり明らかではありませんか。答弁を求めます。

導入から31年(2)――消費税は日本経済に何をもたらしたか

 第二は、消費税が、日本経済に何をもたらしたかという問題です。

 OECD(経済協力開発機構)のデータで、1997年から2017年の20年間の世界の先進国のGDP(国内総生産)の推移を見ますと、驚くべき結果が浮き彫りになります。

 この20年間でアメリカはGDPが2・3倍、イギリスは1・7倍、フランスは1・8倍、ドイツは1・7倍、欧米の多くの国ぐにはGDPが2倍前後に伸びています。ところが日本は20年間でGDPは1・02倍、わずか2%しか伸びていません。OECDの36カ国で断トツ最下位が日本なのです。20年という単位でみた場合、日本は世界でも異常な「経済成長できない国」になってしまっているのであります。

 総理は、この原因がどこにあると認識されていますか。

 私は、度重なる消費税増税が原因の一つであることは明らかだと考えます。1997年の5%への増税は、バブル崩壊から立ち直りつつあった景気回復の芽を摘み、日本経済の長期にわたる消費不況の引き金を引きました。2014年の8%への増税は、今日に及ぶ消費不況の原因となりました。総理には、度重なる消費税増税が、日本経済を世界でも異常な長期低迷に落ち込ませた原因の一つだという認識がありますか。お答えいただきたい。

 日本共産党は、消費税導入が強行されたその日から、一貫して消費税の廃止を求めてきましたが、31年間の消費税の現実に立って、この悪税の廃止を目標とすることをあらためて強く求めるものであります。税金は負担能力に応じて――応能負担の原則にもとづいて、税制の民主的立て直しを行うことこそ急務です。総理の答弁を求めます。

緊急に「5%への減税」を――「二重の経済失政」を正せ

 そのうえで、日本共産党は、緊急の課題として、消費税を5%に減税することを強く求めます。

 なぜ5%への減税か。理由は簡単明瞭です。2014年に5%から8%に引き上げたこと自体が間違いだったからです。

 当時、総理は、わが党の追及に対して、「増税の影響は一時的」と繰り返しました。しかし、現実はどうだったか。1世帯当たりの実質消費支出は、増税を契機に大きく落ち込み、5年半たっても回復せず、年20万円も落ち込んだままです。働く人の実質賃金も、年15万円も落ち込んだままです。「一時的」どころか、長期にわたる消費不況が今にいたるも続いているではありませんか。総理、8%への大増税そのものが経済失政であったことは、明らかではありませんか。

 10月1日に発表された日銀短観では、大企業製造業で3期連続で景気判断が悪化になりました。内閣府が、昨日、7日発表した景気動向指数も下方修正され、「悪化」となりました。こんなさなかに10%に増税など無謀の極み、失政に失政を重ねる「二重の経済失政」といわなければなりません。

 総理、8%に引き上げたことが間違いならば、その間違いを正す――「5%への減税」によって「二重の経済失政」を正すことが、必要ではありませんか。

 日本が、世界でも異常な長期にわたる「経済成長できない国」から抜け出して、経済を成長の軌道にのせるうえでも、いま政治が「5%への減税」という家計応援のインパクトある政策を実行することが必要不可欠と考えますが、いかがですか。答弁を求めます。

「持てるものからきちんと税金を取る」――大企業と富裕層に応分の負担を

 消費税を減税し、社会保障や教育をよくする財源をどう考えるか。

 日本共産党は、財源というなら、「持てるものからきちんと税金を取る」こと、「無駄遣いを一掃する」こと、そして「暮らしを応援することで日本経済を成長の軌道にのせて税収を増やす」こと、この三つを組み合わせれば、消費税に頼らなくても立派にやっていけると具体的に提案しています。

 「持てるものからきちんと税金を取る」という点では、まず何よりも、大企業と富裕層優遇の不公平税制を正し、応分の負担を求める改革を行うべきです。

 大企業は、安倍政権のもと、史上空前のもうけをあげ、内部留保を333兆円から449兆円へと積み増しています。ところがもうけにふさわしい税金を払っていないじゃないですか。中小企業の法人税負担率は18%に対し、大企業の負担率は10%、研究開発減税など優遇税制のおかげです。総理、不公正だと考えませんか。優遇税制を是正し、法人税の税率を安倍内閣以前の水準に戻すことを求めます。

 超富裕層のもうけも史上空前です。保有株式時価総額1000億円以上の超大株主は、安倍政権のもとで12人から58人に増え、保有総額は3・5兆円から17・6兆円へと急増しました。ところが株取引にかかる税金が特別に軽いため、所得が1億円を超える富裕層への税負担は逆に軽くなっています。総理、不公平だと考えませんか。ここでも優遇税制を是正し、最高税率を引き上げるべきではありませんか。答弁を求めます。

「無駄遣いを一掃する」――「イージス・アショア」、辺野古新基地への血税投入を問う

 「無駄遣いを一掃する」という点では、トランプ米大統領言いなりの米国製武器の「爆買い」をやめるべきであります。

 たとえば6600億円以上もの巨費がかかる「イージス・アショア」です。なぜ秋田と山口に配備するのか。米国の戦略国際問題研究所が発表した論文「太平洋の盾 巨大な“イージス駆逐艦”としての日本」は、「イージス・アショア」配備の目的が「ハワイやグアムの防衛」にあると明記しています。北朝鮮からハワイに向かうミサイルは秋田の上空を通過し、グアムに向かうミサイルは山口の上空を通過する。秋田と山口への「イージス・アショア」の配備は、米国防衛としか説明がつかないではありませんか。米国防衛のための武器購入に、6600億円以上もの血税を注ぐ。こんなばかげた政策は中止すべきであります。

 名護市辺野古への新基地建設にも膨大な血税が注がれています。2018年、沖縄県は、総工費は2兆5500億円と試算しましたが、その後、大規模な超軟弱地盤問題が判明し、費用がどこまで膨らむかは誰もわかりません。沖縄県民の繰り返しの「ノー」の審判を踏みつけにし、サンゴの美しい海をつぶす新基地建設に、何兆という規模の日本国民の血税を注ぐ。このような屈辱的な政治も終わりにすべきです。

 取るべきところから税金を取り、無駄遣いを一掃し、消費税を減税するべきです。総理の答弁を求めます。

関西電力の「原発マネー」還流疑惑――政府の責任で徹底的な調査を

 最後に、関西電力会長ら幹部20人が、高浜町元助役から7年間で3・2億円分もの金品を受け取っていた事件について、総理の認識を端的に4点うかがいます。

 第一に、八木会長は、記者会見で「金品の出どころはわからない」と繰り返していますが、事件の構図から、3・2億円分の金品が「原発マネー」の還流であることは明らかではありませんか。総理にその認識はありますか。お答えいただきたい。

 第二に、還流した金品の原資は、国民が支払ってきた電気料金です。関電は、2011年以降、原発再稼働のために家庭向け電気料金を2度にわたって値上げしてきましたが、その一部が還流したのです。再稼働を推進し、電気料金の値上げを認可してきた政府・経済産業省の監督責任が厳しく問われると考えますが、その反省はありますか。

 第三に、関電の会長も、社長も、金品をもらっていた当事者じゃないですか。関電のつくる第三者委員会まかせでは肝心な真相が隠されてしまうことは避けられません。政府自らが、徹底的な調査を行うべきではありませんか。

 第四に、関電だけでなく、原発をもつ11の電力事業者は、原発再稼働のための追加工事費として5兆円を超える事業を発注しています。再稼働利権が問われているのであります。他の電力会社についても、不正がないのかどうか、政府の責任で徹底的な調査が必要だと考えませんか。以上4点について答弁を求めます。

 国政調査権を行使し、関係者を国会に招致して、徹底的な真相究明を行う決意をのべて質問を終わります。


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