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2019年10月8日(火)

独居高齢者 10年で生活保護1.7倍

年金水準の底上げ急務

 生活保護を利用する1人暮らしの高齢者世帯が増え続け、10年間で1・7倍、全利用世帯の半数に達しました。1人暮らしの高齢者世帯には、無年金や低年金の世帯が多い現状があります。安倍政権が進める年金水準の削減や医療・介護の自己負担増をこのまま許せば、1人暮らしの高齢者世帯の生活困窮化に拍車がかかることになります。

全世帯の半数

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 厚生労働省の調査によると、今年7月に生活保護を利用した世帯は約162万9千世帯で、約89万7千世帯が高齢者世帯でした。その9割にあたる約82万世帯が1人暮らしの高齢者世帯で、全利用世帯の半数を占めました。

 生活保護を利用する1人暮らしの高齢者世帯は年々増加。2018年度は月平均80万4873世帯で、10年前(08年度・46万8390世帯)の1・7倍となりました。同じ期間の他の利用世帯は1・3倍増ですから、1人暮らしの高齢者世帯での増加はきわだっています。(グラフ)

 1人暮らしの高齢者世帯で生活保護利用が増え続けている背景には、同世帯に無年金と低年金の世帯が多いことがあります。

目立つ無年金

 18年国民生活基礎調査で、「65歳以上の者のいる世帯」で、世帯類型別に「公的年金・恩給受給者のいない世帯」の割合をみると、夫婦のみ世帯では1・6%(12万5千世帯)でした。ところが、男性の1人暮らし世帯では8・7%(19万4千世帯)、女性の1人暮らし世帯では3・6%(16万5千世帯)でした。このなかには、働くなどして収入を得ている世帯も含まれていますが、1人暮らしの高齢者世帯で無年金の世帯が多いことがわかります。

 また、17年老齢年金受給者実態調査をもとに、老齢年金を受給する1人暮らし世帯の家計の状況をみると、平均年収は約204万円で公的年金(年平均約145万円)が7割を占めています。また、4割近い世帯が年収150万円未満という状況です。

 現在、1人暮らしの高齢者世帯は683万世帯(18年)ですが、国立社会保障・人口問題研究所は、40年には896万3千世帯に達すると推計しています。1人暮らしの高齢者世帯の生活困窮化に歯止めをかけるためにも、無年金の解消と年金水準の底上げなど“減らない年金”“暮らせる年金”の実現が急務となっています。

背景に現役時代の不安定な働き方

 生活保護の利用が急増する1人暮らしの高齢者世帯で、無年金や低年金の世帯が多いのは、現役時代に、低賃金や低収入で不安定な働き方を強いられた人たちが多いためです。

 たとえば、自営業やパート勤務などで働き、厚生年金保険に加入できず、国民年金(満額でも年金額は月6万5千円)にしか加入できなかった人たちや、厚生年金保険に加入できたものの、低賃金や短い雇用期間だったために年金額が低額になっている人たちなどです。

 1人暮らしの高齢者世帯の割合(独居率)について、国立社会保障・人口問題研究所は、今後も増加すると推計しています。さらに、65歳以上の結婚していない人の割合(未婚率)も男性を中心に急増するとしています。(グラフ)

最賃上げこそ

 最低賃金の大幅引き上げや正社員化などで現役時代の賃金や収入を増やすことは、無年金や低年金の世帯の拡大に歯止めをかけるうえで重要です。

 安倍政権は「全世代型社会保障改革を進める」として、▽国民(基礎)年金部分の給付水準3割削減▽介護保険サービス利用時の2~3割自己負担(原則1割)の対象拡大▽75歳以上の医療費窓口負担(原則1割)の原則2割への引き上げ―など年金給付を切り下げ、医療・介護の自己負担をいっそう重くする「改革」を推し進めています。

 「全世代型社会保障改革」が、1人暮らし高齢者世帯の生活困窮化をさらにすすめることは明らかです。

 消費税10%の増税は、全世代に重い負担を強いるもので、暮らしのゆとりを奪うものです。

世論と運動を

 いま求められているのは、国に対して、▽消費税を5%に引き下げて長期にわたる経済低迷を打開すること▽年金水準の削減を中止して、無年金者をなくし、年金水準を底上げする公的年金の改革を進めること▽現役時代の賃金や収入など国民の所得を増やす経済政策に転換すること▽大企業と富裕層に応分の負担を求めることを中心にすえた税財政改革を進め、それを消費税減税と年金など社会保障充実の財源に充てること―を迫る世論と運動です。(村崎直人)

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