しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年10月6日(日)

きょうの潮流

 「高くて硬い壁と、それにぶつかって壊れる卵があるとしたら、私は常に卵の側に立つ」。かつてエルサレム文学賞を受けたとき、作家の村上春樹さんがこんな例え話をしました▼この壁には「システム」という名前があり、私たちを守る存在と思われていますが、時に私たちを殺し他者を殺さしめたりすると。壁と卵の比喩は、香港の雨傘運動でもたびたび引用されたといいます。卵は自由の塊、システムは専制政治の制度として(『香港 中国と向き合う自由都市』)▼1997年の中国返還以降、香港の人びとはシステムと個人の間で揺れてきました。政府の支配が濃くなるたび、それに抗するデモや集会が大規模に発生。「高度な自治」を認める一国二制度を守るといいながら、じわじわと人権や民主主義が脅かされていく危機感があります▼中国建国70周年の日、香港ではデモに参加した高校生が警官から胸を撃たれ重傷を負いました。4日夜にも14歳の少年が太ももを撃たれ、相次ぐ実弾発砲の蛮行に批判が集まっています▼激化する抗議運動に香港政府も圧政を強め、行政長官に権限を集中する緊急法を発動。議会の審議もせずに覆面禁止法を施行しました。市民の怒りと反発がひろがるなか、混迷深まるゆゆしき事態。その行方を世界が懸念しています▼強大な権力の壁に立ち向かう若者らのリーダーの1人、周庭さんは発信します。「弾圧されることは怖いけど、自由を失うことはもっと怖い」。怖いからこそ、私たちはたたかう。


pageup