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2019年10月5日(土)

安倍首相の所信表明 「希望」ほど遠く

写真

(写真)所信表明演説をする安倍晋三首相=4日、衆院本会議

 4日に始まった臨時国会での所信表明演説。安倍晋三首相は「希望にあふれ、誇りある日本を創り上げ、次の世代へと引き渡していく」と語ったものの、その内容はおおよそ「希望」とは程遠い中身で、内政・外交のあらゆる分野で行き詰まっている安倍政権の姿を示しました。

消費税 くらし

国民の悲鳴向き合わず

 消費税10%の増税強行後、初めての臨時国会です。5兆円もの大増税に国民から悲鳴が上がるなか、国会の対応が問われます。ところが安倍首相は、この増税にどう向き合うか、ほとんど語れませんでした。

 安倍首相は「これからも安倍内閣は経済最優先」と宣言しました。しかし語ったのは、増税強行による影響に「目配り」することだけ。「経済の好循環を確保」するといいながら、中身は複数税率やプレミアム商品券などの対策しかありませんでした。日本経済をどうするか―。これまで目玉にしていたアベノミクスについての言及もほとんどなくなりました。

 戦後どの内閣もやったことのない2度もの大増税を強行し、日本経済も国民の暮らしも壊す安倍政権。経済の低迷や国民のくらしをどう良くしていくのか、まったく展望を示せませんでした。

 社会保障の分野でも、安倍首相は「一億総活躍社会」「全世代型社会保障」の実現を掲げたものの、具体策は全くありません。

 「全世代型社会保障」の中身として「意欲ある高齢者の皆さんに70歳までの就業機会を確保する」と訴えましたが、年金だけで生活できず働かざるを得ない高齢者の現状を無視した演説に、議場からは「暮らせないからじゃないか」のやじが飛びました。

 安倍首相は、先の年金「財政検証」では将来の年金が改善することが示されたと語りました。しかし財政検証で示されたのは、基礎年金3割削減であり、減り続ける年金の姿でした。だからこそ7月の参院選で大問題になったのです。減り続ける年金の打開策を示せない安倍首相の姿を浮き彫りにしました。

貿易協定 外交

一方的「譲歩」と「要求」

 日米貿易協定、日韓、日ロ、北朝鮮問題…。所信表明演説は、すでに破綻が明らかになった安倍外交を美辞麗句で取り繕うものでした。

 「日米双方にウィンウィンとなる結論を得ることができた」。安倍首相は「日米貿易協定」をこう誇ったものの、日本にとっての「ウィン」(国益)の中身は語れませんでした。

 それもそのはずです。同協定の中身は、豚肉などの米国畜産物の関税を大幅に引き下げる一方で、米側の自動車・自動車部品の関税削減を先送りするなどの内容を盛り込んだもの。日本側が一方的に譲歩につぐ譲歩の「屈辱的協定」だからです。

 「ウィン」は米側だけ。その証拠に、トランプ米大統領は、最終合意を「米国の農家にとっての巨大な勝利」だと誇っています。

 重大なのは、日韓関係にふれた部分で、「国際法に基づき、国と国との約束を順守することを求めたい」と韓国に迫ったことです。

 隣国・韓国との連携には一切ふれず、一方的に「要求」を突き付けた異例の所信表明演説。議場からは「(関係悪化を)解決する気はないんだろ」とのやじが飛ぶほどでした。

 日韓の関係悪化を自らがどう打開するかの考えを示せず、一方的に「要求」を突き付ける姿勢は、いっそうの関係悪化を招きかねません。

 沖縄県名護市辺野古では、米軍新基地建設へ無法な土砂投入が進められています。首相は「辺野古への移設を進める」と宣言。いっそうの強権政治を強める構えを示しました。

 「沖縄の皆さんの心に寄り添いながら」との言葉だけがむなしく響きました。

改憲

民意無視の執念は冗舌

 内政・外交で展望を示すことができなかったのと対照的に、冗舌だったのが憲法改定です。冒頭から憲法に触れ、「新しい令和の時代にふさわしい」「誇りある日本を創り上げ(る)」と改憲への執念をあらわにしました。最後も「新しい時代」「令和の時代」を繰り返し、「日本がどのような国を目指すのか。その理想を議論すべき場こそ、憲法審査会だ。しっかり議論し、国民への責任を果たそう」と訴えました。

 一連の発言は、日本国憲法で憲法尊重擁護義務を課された首相が改憲論議の旗を振り、三権分立を侵す異常なもの。国会ごとに同様の演説をして批判を受けていますが、今回もそうした戒めを一顧だにせず発言を繰り返しました。

 今国会は、7月の参院選で改憲勢力の議席が3分の2を割り込み、自民党が単独過半数を失った下で行われます。参院選で国民が下したのは、「期限ありきの性急な改憲の動きには賛成できない」という審判です。民意を無視した暴走は許されません。

原発マネー 災害

不都合は隠し 追及逃れ

 国民の大きな関心事であり自身が批判と追及を受ける問題については、軒並み言及を避けました。

 関西電力の経営幹部が原発立地自治体の元助役から多額の金品を受領していた「原発マネー」還流疑惑には一切触れませんでした。

 国民の支払った電気料金を原資とする「原発マネー」が関電幹部に還流していた深刻な疑惑です。何よりも、安倍政権が推し進めてきた原発再稼働の過程で起きた問題だからこそ、政府の監督責任が厳しく問われます。原発推進政策そのものが問われる問題でもあります。

 千葉県などで大きな被害をもたらした台風15号被害では、政府の初動の遅れが指摘されています。長期の停電は、東京電力による人員削減、送配電設備への投資額の減額が背景にあるといわれています。同社は、株式の過半数を国が保有する事実上の「国有」企業です。政府の監督責任も問われます。

 追及されたくない課題は言及を避け、自らの悲願である改憲は熱心に語る―。首相のご都合主義を許さない論戦が週明け、7日から始まります。


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