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2019年10月5日(土)

主張

首相所信表明演説

国民に痛みを強い、希望示せず

 臨時国会での安倍晋三首相の所信表明演説を聞きました。消費税の増税を強行した直後の国会だというのに、そのことには一言しか触れません。都合のいい数字だけを挙げた自分の“実績”の自慢と、年金、医療、介護の社会保障改悪や改憲などに執念を示した危険な内容です。首相は演説の冒頭、「新しい令和の時代にふさわしい、希望にあふれ、誇りある日本を創り上げ、次の世代へと引き渡していく」と言いましたが、国民にとっては痛みの押し付けだけで、希望や展望は見えません。

増税に開き直り自画自賛

 首相の所信表明演説はその時々の政権の政治姿勢や基本方針を明らかにするものです。年初から始まる通常国会冒頭での施政方針演説とともに重視されているものです。とりわけ今回は、参院選後初となる本格的な論戦が行われる国会での演説だけに、注目して聞きました。

 何より怒りを覚えたのは、1日から消費税が10%に増税され、国民がその負担の大きさや制度の複雑さを改めて実感しているというのに、首相の演説では「消費税率引き上げによる影響には、引き続き十分に目配りしてまいります」などという、「紋切り型」の言葉で片づけたことです。首相には、増税による国民の痛みが全く見えていません。増税とそれに伴う値上げによる負担が、国民の肩に重くのしかかっています。消費税を安倍政権が8%に増税した以前の5%にまで緊急に減税させ、廃止を目指すたたかいが必要です。

 首相は演説で、高齢者の雇用が増えたとか、「正社員」が増えたとか、農産物の輸出が増えたとかと繰り返し、“自画自賛”しました。しかし、安倍政権が消費税を8%に増税する前に比べ、家計の消費支出が年間20万円以上も減少していることや、働く人の実質賃金が15万円も減っていることには一切触れようとしません。自分に有利な数字ばかり並べて“実績”を宣伝するのは、安倍政治の実態が国民に知られるのを恐れるからです。

 安倍首相は「1億総活躍社会」の完成に向かって、「多様な学び」「多様な働き方」「多様なライフスタイルに応じる社会保障制度」の「改革」に果敢に挑戦するといいました。「全世代型社会保障改革」が安倍政権の売り物ですが、国民にとっては老後が安心できないほど低い年金を、「マクロ経済スライド」でさらに減らし続ける年金の仕組みが深刻な問題です。「改革」するというなら、まず「マクロ経済スライド」を中止し、「減らない年金」に改革することが国民の切実な要求です。

戦後の反省に逆らう改憲

 安倍首相は外交問題でも、アメリカのトランプ政権との貿易交渉の合意を“自慢”し、日本の農畜産業などへの打撃には触れません。沖縄の米軍新基地の建設でも推進姿勢を変えません。日韓関係などでも打開の道を示せません。

 今国会は、戦後憲法が制定されて最初の国会が召集されてから200回目です。首相がその国会の所信表明演説の結びで、改めて改憲の議論を求めたのは重大です。首相の憲法尊重擁護義務や「三権分立」の原則を踏みにじり、戦争を反省して不戦を誓った憲法の精神にも反するものです。

 安倍改憲の企てに終止符を打つたたかいがいよいよ重要です。


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