しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年9月25日(水)

カジノ利権

導入すれば撤退不可能

誘致自治体に訴訟リスク

 カジノを中核とする統合型リゾート(IR)の誘致を目指す自治体と日本進出をねらう海外カジノ事業者による利権争奪戦が激化しています。そんな中、カジノの設置を国に認可された都道府県・政令市が、カジノ導入後に撤退を望んでも、事業者側との訴訟リスクなどから後戻りは不可能な仕組みになっていることが明らかになりました。

(竹腰将弘)


 大阪府・市は19日、事業者を対象にした大阪カジノのコンセプト募集に応じたのが(1)米ラスベガスのカジノ業者MGMとオリックスの共同事業体(2)マレーシア資本のゲンティン(3)名称非公表希望の事業者―の3者であったことを公表しました。

 他方、カジノ誘致を正式表明した横浜市をめぐっては米・ラスベガス・サンズ、香港資本のメルコリゾーツが、大阪からの撤退と横浜進出へのシフト換えを公表しました。

 政府が当面3カ所としているカジノ開設を認める区域がどの自治体になったとしても、乗り込んできた海外カジノ事業者が主役となって施設を運営することに変わりはありません。

「投資リスク」

 海外カジノ事業者側が日本のカジノの制度をめぐって一様に「投資リスク」とみなしていたことがあります。

 カジノ施設の「区域整備計画」の政府による認定期間が「初回10年、その後5年ごとに更新」とされていることです。

 マカオやシンガポールで事業期間が20年間とされているのに比べて短く、長期間にわたって安定的に事業を継続する保証がないため、1兆円にものぼる巨額の初期投資の回収には危険すぎるというのです。

 今回の内閣改造で文科相に就任した萩生田光一氏は、カジノ議連(国際観光産業振興議員連盟)の幹部として、大阪市内で開かれたカジノ推進派の集会(8月8日)で講演し、この問題に言及しました。

 萩生田氏は、政府の認定期間は、定期的にカジノ事業を確認するための便宜的な制度にすぎないと説明しました。誘致自治体と事業者が結ぶ「実施協定」は認定期間を超える30年間で締結することができ、その方が優先すると強調したのです。それが分かるようにする解説を政府の「基本方針」案に書き込ませるとも、のべました。

 さらに、自治体にカジノ反対の首長が誕生したり、議会で反対派が多数になった場合、「『あんたたち出て行ってくれ』といっても(事業者と)訴訟になる」と指摘。事業者との訴訟リスクを抱えた自治体は、認定の取り消しを求めることは困難であるとのべました。

「慎重な考慮」

 事実、政府が9月になって公表した「基本方針」案には「IR事業は長期間にわたって安定的で継続的な実施の確保が必要」という文言が盛り込まれ、自治体による認定取り消しの申請には「慎重な考慮が必要」とされています。

 一度手を出したら容易に抜け出せないカジノ。まさに「慎重な考慮」が必要です。

写真

(写真)カジノ推進派の集会で講演する萩生田光一氏=8月8日、大阪市内

■萩生田光一自民党幹事長代行(当時、8月8日)の発言

 「海外の投資家やオペレーションをめざしている企業の方々からは、IR区域の認定に最初に10年間の許可を与え、5年間ごとに更新の手続きをすることになっていることがIR事業者の大きなリスクになっていることはわれわれも承知している」

 「あえてこの場で申し上げるが、基本方針をつくる中で解説をきちんと入れさせる。10年たったときに、知事や市長や議会の構成がかわって『やっぱりあんたたち出て行ってくれ』といっても訴訟になる。これはどうあっても自治体の側に非があるということになる」

 「大きく安定的なビジョンがあって、投資がはじまってしまっているのだから、10年たったときに首長がかわったからといって『事業をただちにやめろ』ということはできないようになっている」

■政府の「基本方針」案(4日公表)

 「IR事業は長期間にわたる安定的で継続的な実施の確保が必要であることを踏まえ、都道府県等とIR事業者との合意により、区域整備計画の認定の有効期間を超えた期間を定めることも可能である」

 「都道府県等は、公益上必要があるものとして区域整備計画の認定の取消しの申請を行おうとするときは、IR事業が廃止されることに伴う社会的影響等も踏まえた上で、慎重な考慮を行うことが必要である」


pageup