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2019年9月25日(水)

きょうの潮流

 子どもの頃、「アルプスの少女ハイジ」で見た、とろけるチーズの魅力的だったこと。それはスイスでの徹底した現地取材に裏付けられたものでした。半世紀にわたって日本のアニメーションをけん引してきた高畑勲監督の軌跡が「高畑勲展」(東京国立近代美術館で10月6日まで)で堪能できます▼昨年、遺品の中から発見された膨大な資料の一端を初公開。監督と付き合いの長い映像研究家・叶(かのう)精二さんらが分析しました。シナリオ準備稿、存在しないと思われていた絵コンテ…。「いつ高畑監督は“高畑監督”になったのか。スタジオジブリ以前を体系的に展示するのは初めて」と叶さん▼その一つが東映動画時代、25歳の高畑さんが書いた「ぼくらのかぐや姫」と題する企画メモ。ボツになりましたが「絵巻物をよく研究して、その描法を生かす」など、50年後の「かぐや姫の物語」の片鱗(へんりん)が垣間見えます▼長編アニメーション初監督作品「太陽の王子 ホルスの大冒険」(1968年公開)のテーマは団結と信頼。「作業の民主化」をはかり、スタッフみんなから提案を募りました。完成後は組合も観客動員。「赤旗」に広告を出させる、との記述も▼常々、観客には能動的に見ることを促しました。受け身では「泣け」たり「勇気をもらえ」た気になっても現実社会を賢く生きることには役立たないと▼空気を読む日本人の同調気質に批判的。展示にはありませんが、流されないための最後の歯止めが憲法9条と主張していたことも記憶に留めたい。


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