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2019年9月14日(土)

自民改憲本部長に細田氏

衆院憲法審査会長に佐藤元国対委員長

 自民党は内閣改造・党役員人事を踏まえ12日、党憲法改正推進本部長に細田博之前本部長を復帰させる方針を固めました。安倍首相は同日、首相官邸で細田氏と会談しており、本部長就任を要請したとみられます。

 また同党は、衆院憲法審査会会長に佐藤勉・元国会対策委員長をあてる人事を検討しています。

 佐藤氏は、「野党にもパイプがある」などとされ、憲法審査会での国民投票法改定案の審議と改憲論議の開始に向け、野党分断・取り込みの手法発揮が期待されての起用です。しかし佐藤氏は、2015年の安保法制=戦争法を強行した当時の自民党国対委員長です。当時の一部野党(次世代の党など)との同法案部分「修正」を演出する一方、首相官邸と直結で強行審議を重ね、最後は数の力で問答無用に押し切る運営を指揮した張本人です。

 細田氏は昨年、自民党の改憲4項目・条文イメージたたき台素案((1)9条への自衛隊明記(2)緊急事態条項(3)教育無償化(4)参院合区解消)のとりまとめを進めました。9条改憲をめぐって、安倍首相が提唱した「9条1、2項を残して自衛隊を明記する」案と、9条2項削除を主張する石破茂元幹事長らの案とで党内の意見が割れていましたが、安倍首相案でとりまとめを推進しました。

 安倍首相は昨年9月の役員人事で、細田氏に代えて「盟友」の下村博文元文部科学相を本部長にあてましたが、露骨な「改憲シフト」であったうえ、下村氏が憲法審査会の開催に反対する野党を「職場放棄」などとののしったため、国民と野党の憤激を買い、審査会での改憲論議が全く進まない結果に終わりました。細田氏の再任は、下村氏の事実上の「更迭」に対応するものですが、下村氏は党の選対委員長の要職に引き続きとどまっており、根本的な反省があるとは言えません。


解説

首相に忠実、数頼みの強行策

野党分断・改憲取り込み狙う

 安倍晋三首相にとって9条改憲の実現に向けての当面の最大の課題は、衆参の憲法審査会での論議を開始し、推し進めることです。

 昨年9月の人事で、党や国会の憲法審査会の要職に改憲強硬派をズラリと配置する「改憲シフト」は国民と野党の警戒と反発を呼び、逆効果となって改憲論議は全く進みませんでした。今回の人事では「反省」を踏まえ、そこを打開することが課題となっています。元国会対策委員長の佐藤勉氏を衆院憲法審査会長にあてる人事を検討しているのは、野党との交渉経験豊富な同氏の「手腕」に期待してのものとみられます。野党工作、野党分断の動きに警戒を強める必要があります。

 しかし、いわゆる「国会対策」は、多数を占める与党が内閣提出法案を効果的に審議、成立させることが課題で、最終的には数の力で押し切るものです。野党との「交渉」でも、審議時間数で野党と折り合いをつけるなど、野党に部分的譲歩を示し「花」を持たせながら、最後は強行採決というのがお決まりのパターンです。

 安保法制=戦争法の強行を指揮した「佐藤国対委員長」の最大の特徴は「官邸直結」であり、首相の意に忠実に強硬策を実行したことです。

 しかし「憲法改正」では、数の力で与党の意見を押し切るという発想は通用しません。憲法は、政治を進める与野党共通の土台です。3分の2の特別多数決で改憲発議するとされているのも、野党を含む圧倒的多数の賛成で国民投票にかけることが想定されています。主権者である国民の「改憲の必要性」の認識を背景に、野党との十分な審議、合意がなければ発議には至らないはずです。そもそも数を頼みに「強行採決」で発議しても、国民投票で否決されるリスクが大きくなるのは当然です。

 憲法改定を積極的に求める世論は乏しく、「安倍首相のもとでの改憲」に「反対」が世論の多数です。「国対」的な取引によって野党を取り込み、改憲論議を大きく動かせると考えているなら筋が違うと言わざるを得ません。

 (中祖寅一)


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