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2019年9月8日(日)

日ロ領土問題 「進展なし」では済まない

安倍屈従外交 深刻な傷痕

 安倍晋三首相はロシアのプーチン大統領と会談(5日、ウラジオストクでの東方経済フォーラム)しましたが、日ロ領土問題についての進展は得られませんでした。

 安倍首相は東方経済フォーラムでのスピーチで「ウラジーミル。君と僕は同じ未来を見ている」「ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けよう」などと手放しでプーチン氏への「信頼」を示しました。しかし、プーチン氏は同日未明、色丹島に新設された水産加工場の稼働式に中継映像で参加。8月にはロシアのメドベージェフ首相が択捉島を訪問するなど、ロシア側は「主権」をアピールする一方的行動を続けています。

 安倍首相は今回を含め27回もの会談をしてきたと自慢しますが、領土問題は「進展しなかった」では済まない深刻な傷痕を残しています。

重大な失態

 ちょうど1年前の東方経済フォーラム(昨年9月12日)に参加したとき安倍首相は、プーチン大統領が目の前で「年末までに前提条件なしで(日ロ)平和条約を結ぼう」と発言したのに対し、何の反論もできませんでした。このことに対し「重大な外交的失態」との批判が湧き起こりました。

 平和条約締結は、公式の国境画定という意義を持ちます。「前提条件なし」での平和条約締結は、千島列島及び歯舞・色丹に対し主権を主張しているロシアに対する「領土要求」の放棄となります。

 また昨年11月のシンガポールでの会談では、「日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速させることで一致した」としました。

 1956年の日ソ共同宣言は、平和条約締結後に、北海道の一部である歯舞、色丹の引き渡し(譲渡)を行うとするものでしたが、「2島返還で決着」とするソ連(当時)側との解釈の違いを含んでいました。

 「日ソ共同宣言を基礎」に平和条約締結という基本方針は、歯舞・色丹に国後・択捉(南千島)を加えた4島返還という歴代自民党政府の主張も自己否定し、2島返還で決着というロシア側の主張への全面屈服となるものでした。

不公正根本に

 日ロ領土問題の根本には、旧ソ連のスターリンが、領土不拡大という戦後処理の大原則を踏みにじり、千島列島を占領し、米英ソ・ヤルタ秘密協定に基づいてサンフランシスコ条約で追認したという不公正があります。その根本的是正を抜きに、問題の解決はありません。ところが歴代自民党政府は、そこに踏み込むことができず、「南千島は千島にあらず」という歴史的にも国際法的にも道理を欠く主張を繰り返してきました。

 安倍首相は、そうした不公正を是正するどころか、歴代政府の立場さえ投げ捨て、プーチン大統領との「信頼関係」に頼って、「部分的な外交成果」をあげることで政権浮揚を図るという浅はかな思惑でことに臨み、いっそう混迷を深めたと言えます。

 報道では、プーチン大統領は安倍首相との会談後、ロシアの民間テレビ番組で、「(第2次世界大戦の結果)スターリンがすべてを手に入れた。議論は終わりだ」などと放言しています。文字通り戦後処理の不公正を追認し固守する姿勢です。これに対して、国際的に道理を持った主張をしないまま首脳間の「信頼関係」だけ強調しても、千島列島や歯舞・色丹の返還の見通しが開けるはずはありません。

 (中祖寅一)


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