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2019年9月3日(火)

「慰安婦」合意

日本政府 韓国に「性奴隷」不使用要求

許されぬ歴史偽造

 安倍政権は、2015年12月の日韓「慰安婦」合意を、文在寅(ムン・ジェイン)政権がほごにし、韓国が「約束を守らない」ことに対する制裁として、「貿易制限措置」の正当化をはかっています。

 日韓「慰安婦」合意は、当時の岸田文雄外相と韓国・朴槿恵(パク・クネ)政権の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相との間で交わされましたが、17年5月に誕生した文政権は、同年12月28日に韓国外務省・作業部会による検証結果の報告書を公表しました。

 その中で重大なことは、「慰安婦」合意には、「(日韓)外相共同記者会見の発表内容以外の非公開部分があった。このような方式は、日本側の希望により、ハイレベル協議において決定された」との指摘です。非公開協議を担当したのは、日本側は谷内正太郎国家安全保障局長、韓国側は李丙琪(イ・ビョンギ)韓国大統領府秘書室長でした。

 その非公開部分の内容として、日本側は(1)「今回の発表により、慰安婦問題は最終的かつ不可逆的に解決されるので、挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)などの各種団体が不満を表明した場合であっても、韓国政府はそれに同調せず、説得していただきたい。在韓国大使館前の少女像をどのように移転するか、具体的な韓国政府の計画をうかがいたい」(2)「第三国における慰安婦関係の像・碑の設置については、このような動きは…適切でない」(3)「韓国政府が今後、『性奴隷』という言葉は使用しないでほしい」―と要求したとされています。

 韓国側は当時、(1)(2)について事実上受け入れ・譲歩し、(3)「性奴隷」という表現を使うなとの日本の要求に対して、「韓国側は、性奴隷が国際的に通用する用語であることから反対していたが、政府が使用する公式名称は『日本軍慰安婦被害者問題』だけであると確認した」と指摘。不使用の「約束」はしていないものの、「日本側がこのような問題に関与できる余地を残した」としています。

 報告書はこれらの確認のうえで、韓国政府は「被害者中心、国民中心ではなく、政府中心で合意した」と認定。安倍晋三首相の「おわび」の表明など「ある程度進展として評価できる部分さえもその意味が薄れてしまった」としています。文在寅大統領は、報告書発表とともに、「非公開協議の存在は国民に大きな失望を与えた」「この合意では慰安婦問題を解決できない」とし、「日本との正常な外交関係を回復していく」と表明しました。

 秘密協議の存在とその内実は、「最終的かつ不可逆」とされた合意の狙いを浮き立たせます。戦時中、多くの韓国人女性を「性奴隷」とし、その尊厳を踏みにじった事実を「不可逆的」に封じ込めていく。恐るべき歴史偽造の意図です。当時の韓国政府にも責任はあります。人権の名において、「合意」の過程がより深く検証されるべきです。(中祖寅一)


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