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2019年8月31日(土)

きょうの潮流

 8月もきょうで終わり。まだまだ暑さの厳しい地方もありますが、聞こえてくる虫の声はセミからコオロギやスズムシに変わってきました▼虫といえば平安時代の物語集『堤中納言物語』に「虫めづる姫君」という話があります。「めづる」は好む、愛するという意味。この姫君、とにかく虫が大好きで、いろいろな虫を箱の中に入れて飼っています。中でもお気に入りは毛虫で、手のひらにのせて観察します。周囲からは変わりものと見られています▼生命誌研究者の中村桂子さんは『「ふつうのおんなの子」のちから』という著書でこの姫君を「しっかりした考えを持っている」と評しています。「あらゆることの根本を調べてこそ理由や原因がわかる」と語る姫君は「研究者としかいいようがない」とも▼姫君は、お歯黒や眉毛を抜いて墨で描くといった当時の女性の風習にも、「自然のままがいいから」と従わなかったとされます。周りにどう見られても、自分の価値観を大切にする。架空の話でしょうが、いまの私たちにとっても示唆的です▼中村さんは「生命誌」という新たな学問分野を立ち上げるときに、この話に刺激を受けて、生命を「めづる」ことを基本にしたいと考えたそうです。1000年前に書かれた物語が現代の科学者に影響を与えたというわけです▼この夏休み、子どもたちは虫などの自然と触れ合って、「めづる」機会を持てたでしょうか。どの子にも好奇心や探求心をはぐくむ豊かな環境が保障されるよう願います。


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