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2019年8月28日(水)

主張

財政検証結果

減らない年金へ改革は不可欠

 厚生労働省が2019年の年金財政についての検証結果を公表しました。財政検証は、「年金財政の健全性」を点検するため、5年に1度行われています。今回の検証結果では、04年の改悪年金法で導入された年金自動削減の仕組みである「マクロ経済スライド」の下で、将来の年金額が大幅に削減・抑制される実態が改めて浮き彫りになりました。切実な願いである老後の安心のために「減らない年金」への改革を実現することが不可欠となっています。

大幅削減の実態浮き彫り

 財政検証は、出生率や平均寿命の推計、物価や賃金の上昇率の予測値などをもとに、いくつかの前提を置いて、今後約100年間の年金財政と給付の見通しを提示するものです。検証結果は、年金制度の問題点や課題を明らかにして、法律や制度の改定議論に向けた基礎になる資料とされます。

 厚労省が27日、公表した検証結果は、長期にわたって年金給付水準が下がり続ける姿を具体的な数字で明らかにしました。厚労省の「モデル世帯」(夫は40年間会社員・妻は専業主婦)の場合、65歳時点で受け取る年金水準を示す「所得代替率」(現役世代の平均収入との比較割合)は現在の約6割が、27~28年後には5割程度にまで低下するとしています。経済成長や雇用が進まないと、5割を割り込む場合もあります。

 とくに打撃が大きいのは、基礎年金(国民年金)です。年金自動削減の期間が現在より3~4年延長され、年金水準は現在より約3割も減らされることになります。先の参院選で議論になった、40年ごろまでに7兆円規模で年金が削減される深刻さは変わりません。物価・賃金が上がっても、その分よりも年金引き上げ幅を低く抑え込む「マクロ経済スライド」の弊害を示しています。

 この自動削減の制度を廃止し、「減らない年金」へ改革することは待ったなしの課題です。そのための国民的な議論こそ必要です。

 ところが安倍晋三首相は、年金削減の仕組みに固執し、真面目に議論する姿勢がありません。5年前の財政検証は6月に発表され、今回も6月に公表されるとみられていましたが、大幅にずれ込みました。6月に“公的年金だけでは老後資金2000万円が不足する”と記載した金融庁審議会の報告書が大問題になり、国民の年金への不満と批判が広がる中、参院選で安倍政権と与党に不利に働かないよう公表を先送りした疑いが濃厚です。国政選挙という重要な審判の機会に、有権者に年金の現実を隠し続けた安倍政権の姿勢は、あまりに不誠実で無責任です。

賃上げと雇用安定こそ

 日本共産党は、「マクロ経済スライド」廃止のため、財源を確保する提案をしています。その一つは、高額所得者優遇の保険料を見直し、1兆円規模で年金財政の収入を増やすことです。また、約200兆円にもなる年金積立金をさらに積み増しすることをやめて計画的に取り崩し、年金給付に活用することも求めています。さらに根本的な対策として、年金の支え手である現役労働者の賃上げと、非正規雇用の正社員化で、保険料収入と加入者を増やし年金財政を安定させることが欠かせません。暮らしを保障する年金制度にするために政治は役割を果たす時です。


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