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2019年8月26日(月)

主張

企業主導型保育所

「質」置き去りの仕組み改めよ

 安倍晋三政権が待機児童対策として推進している「企業主導型保育事業」の深刻な問題が次々と噴き出しています。閉園や定員割れをする施設が相次ぐとともに、脆弱(ぜいじゃく)な開設審査の体制に付け込まれ、助成金が詐取される事件まで起きました。

 このような仕組みを、子ども・子育て政策の“目玉”に位置付け、施設基準などを緩和し、普及の旗を振ってきた安倍政権の責任は重大です。保育の質や安全性の確保を置き去りにしたやり方を、根本から改めることが必要です。

“目玉”に位置付け推進

 企業主導型保育は、2015年秋、安倍首相が打ち出した「一億総活躍社会」実現の政策の中で、具体化がすすめられたものです。保育所の待機児を解消する施策の柱の一つとして創設され、16年から事業がスタートしました。

 企業主導型の保育施設は、企業が従業員向けにつくるものと、保育事業者が設置し企業が使うものがあり、いずれも一定数の地域の子どもが利用できるとしています。認可保育施設と異なり、自治体は設置・監査に関与しません。保育士の配置基準は、認可施設の半分以下でいいなどとしています。

 一方、助成金は認可施設並みにしています。企業の参入を積極的に促す狙いからです。この仕組みのもとで、今年3月末までに、約8万6000人分の施設への助成が決定されました。

 このように質の確保をなおざりにして、急速に拡大させたことが、さまざまな問題を引き起こす大本になっています。安定して運営できる見通しもないままに事業をスタートさせるなどしたことによって、定員割れ、保育士給与の未払い、閉園などのケースが後を絶ちません。所管する内閣府の調査では、助成を受けた施設の約1割が事業をやめたことが明らかになっています。

 このような事態を横行させている要因に、あまりに貧弱な審査・監査の仕組みがあります。事業者からの申請を審査したり、運営中の施設の監査をしたりしているのは、公益財団法人「児童育成協会」です。しかし、同協会には事業者を厳格にチェックできる体制が整っておらず、急増する申請に対応する人員も圧倒的に不足していることがかねて問題になっていました。このような体制が、書類提出だけで済ませるようなずさんな審査につながり、悪質な事業者による助成金詐取を許した背景になったことは明らかです。

 企業主導型保育をめぐる問題が噴出する中、政府自身も「量に重点が置かれ、質の確保が十分でなかった」(宮腰光寛少子化担当相)と認めざるをえません。内閣府が設置した検証委員会も3月に改善案をまとめました、しかし、あくまで「円滑な実施」を前提にしており、欠陥だらけの今の仕組みの大枠を変える姿勢はありません。

認可保育所の大増設こそ

 いま必要なのは、企業主導型保育事業に頼ってきた安倍政権の待機児童解消策を根本的に転換することです。行き詰まっている企業主導型の推進をやめて、自治体が設置・監査に責任を持つ仕組みに改定することを検討すべきです。

 待機児童解消を実現するために、安全性と質がしっかり確保された認可保育園を大増設することが急務となっています。


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