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2019年8月24日(土)

主張

「空き家」問題

有効活用を促進する対策を

 空き家の急増が止まりません。2018年の住宅・土地統計調査(総務省)では、全国の空き家は846万戸でした。約7戸に1戸は空き家という計算です。33年には空き家は約2150万戸となり、「3戸に1戸」という将来がくると予測する民間調査機関もあります。街のあちこちで空き家や空き地が増える「都市のスポンジ化」も顕著です。空き家をこれ以上増やさず、どう活用するかは、街づくりにとっても大きな課題です。

自治体独自の工夫も

 空き家は、空いている貸家、売りに出している家、別荘、「その他の空き家」に分類されます。一番問題なのは、放置されたままの「その他の空き家」が増え、347万戸にものぼっていることです。庭木が生い茂り隣家に迷惑をかける、火事の火元にもなる危険など安全・衛生・景観の上でも解決しなければならない問題です。

 空き家が増える理由はいろいろあります。子どもの減少や核家族化などで、親世代の住宅を引き継がないといった事例は各地で多く見られます。

 日本弁護士連合会が昨年行った全国の市区町村への実態調査では、空き家が発生する制度上の大きな原因として自治体が挙げたのは、(1)中古建物よりも新築建物を優遇する税制(2)都市部への人口集中を促すような都市政策(3)住宅需要を超えた新築建物の建築を容易にするような税制上の措置―でした。国の政策や制度を抜本的に見直すことが不可欠です。

 15年5月、「空家対策特別措置法(空き家法)」が施行されました。危険な空き家を自治体が「特定空家」と認定して解体し、費用を所有者に請求するなどというものです。しかし、こうした行政代執行での取り壊しはわずかです。

 解体・除去は資源の浪費でもあり、空き家を有効に活用できるようにすることが重要です。現存する住宅資源を生かすことを促進し、中古住宅の流通をしやすくできる施策の拡充へ税財政制度の改善などが求められています。

 「空き家法」では十分対応できないことから独自に条例制定を行って、対応をしている自治体も数多くあります。空き家の登録を募って、ウェブ上で物件情報を公開して購入者や賃借人を探す「空き家バンク」の設置をすすめている自治体もあります。地域の人たちが知恵を出し合い、さまざまな工夫をして、空き家を利活用する例も生まれています。地元の要望にそった改修をして高齢者から子どもまでが気軽に使えることができる「居場所」につくりかえる、あるいはシニアハウスとして再生させるなどです。こうした“点”の取り組みが、“面”的な流れになるか、注目されます。

“二極化”をただし

 空き家問題の大本には、首都圏への人口の集中と地方の衰退などの“二極化”があります。多くの空き家がすでに生まれているのに、税制・金融面での優遇措置があるため年間100万戸近い新築住宅が建設されています。東京など大都市では都市再開発と一体となったタワーマンション建設が盛んに行われています。

 日本に比べて空き家率の低いヨーロッパ諸国では住宅新築ではなくリフォームにシフトしています。住宅政策の根本的な転換をはかることが必要です。


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