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2019年8月21日(水)

主張

首相の改憲執念

国民の審判への逆行許されぬ

 安倍晋三首相が先週、地元・山口県長門市で、「憲法の議論をいよいよ本格的に進めていくべき時を迎えている」と述べ、秋の臨時国会で、改憲議論を加速させることに執念を示しました。

 安倍首相はその理由に、先の参院選で「勝利」したことをあげました。しかし、参院選での国民の審判は、自民・公明の両党や日本維新の会などの改憲勢力に改憲案発議に必要な3分の2の議席を与えていません。自民党も単独では議席の過半数を割り込みました。改憲に固執する首相の野望を許さない国民の意思は、明白です。

選挙結果も世論調査も

 首相の発言(13日)は、父親の安倍晋太郎・元外相の墓参りの後、記者団に語ったものです。「令和の時代を迎え、その幕開けの国政選挙で勝利をおさめることができた」「自民党立党以来の最大の課題である憲法の議論を国会でいよいよ本格的に進めていくべき時を迎えている」と表明しました。

 参院選で「勝利」したなどというのは、選挙結果を真摯(しんし)に受け止めない全くの強弁です。「早期の憲法改正」を公約に掲げた自民党は、改選比で、9議席も減らしています。

 時事通信が発表した世論調査(16日)でも、安倍政権下での憲法改定に「反対」が41・3%で、「賛成」の32・1%を大きく上回っています。選挙結果で見ても、世論調査で見ても、国民は、安倍政権下での改憲を進めることを望んでいません。

 首相は2017年の憲法記念日での改憲派集会へのメッセージなどで、9条に自衛隊を書き込むなどの改憲を20年に施行させることを目指すと明らかにしました。自衛隊明記で、戦力不保持・交戦権否認を掲げた9条を死文化し、武力行使のための自衛隊の海外派兵などを可能にするものです。

 しかしこの改憲スケジュールは、首相の思惑通りには進んでいません。自民党の改憲案の国会提示は、昨年の通常国会から、3国会連続でできませんでした。衆参両院で改憲勢力が3分の2以上の議席を握っていた時でも、国民世論がストップをかけてきたのです。

 先の参院選で「改憲勢力3分の2議席割れ」の審判を受けた後、なお首相がことあるごとに、改憲の執念を口にするのは焦りの表れです。改憲議論の促進のために安倍首相に起用された、自民党の下村博文改憲推進本部長は、「秋の臨時国会はまず議論することだ」「衆参(両院)憲法審査会で意見を出し合って、テーマを絞り込んでいく流れができれば一番いい」と発言しています(時事通信インタビュー)。とにもかくにも国会で、改憲論議を進めたいという姿勢です。民意に反した暴走は許せません。

憲法を生かす政治を

 安倍首相は参院選中、盛んに「憲法を議論する党か、議論しない党かを選ぶ選挙だ」と言いました。とんでもない、議論のすり替えです。国民が求めているのは、憲法を守り生かす政治であり、改憲の議論ではありません。

 憲法には9条だけでなく、「すべて国民は、個人として尊重される」と明記した13条、国民の生存権を保障した25条など、重要な条文があります。大切なのは、その憲法を守り、現実を正すことです。そのための議論こそ、積極的に行おうではありませんか。


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