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2019年8月9日(金)

きょうの潮流

 そこは、250年の長きにわたり、ひそかな信仰を守り続けた地でした。潜伏キリシタンの里、長崎・浦上。徳川幕府から邪教の徒として迫害されました▼「崩れ」と呼ばれた発覚や捕縛に何度もさらされた受難の歴史。とくに幕末から明治初めにかけた「浦上四番崩れ」は最大の弾圧で、3千余の民が流罪に処されました。やがて禁教が解かれ、帰郷した人びとが歳月をかけて一つ一つの瓦を積み上げ、完成させたのが浦上天主堂でした▼しかし喜びからわずか20年後、「浦上五番崩れ」と呼ばれる新たな悲劇に襲われます。至近距離に落とされた原爆によって廃虚と化したのです。すさまじい破壊の無残な痕は一瞬で奪われた命や被爆によって苦しむ人びと、破壊された町を象徴しました▼当時、がれきの中から発見した米兵が司教から譲り受け持ち帰ったという十字架が、74年の時をへて米国から浦上に帰ってきました。元は同じく被爆したマリア像とともに祭壇の背後に飾られていたといいます▼すでに亡くなった米兵から託された米大学の平和資料センターの所長は「この十字架は核兵器を含むあらゆる大量破壊兵器の使用を中止するよう、私たちの政府に求めている」。受け取った大司教も原爆の残忍さや愚かさを、私たちに強く訴えていると▼きょう9日、被爆十字架は平和祈願のミサで被爆マリアと一緒に天主堂の祭壇に納められます。人類が背負った罪深さ、被爆の実相を伝えながら、困難を乗り越えていく歴史の“証人”として。


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