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2019年8月7日(水)

きょうの潮流

 「N家の崩壊」と題した白黒の写真群。働き者の漁師だったNさんは、あの日、建物疎開の作業に動員されて被爆。全身にやけどを負いました。写真はその後の家族を追っています▼家計を支えた妻が亡くなり、病苦と極貧の谷間であえぐNさん。日々、飢えの恐怖におびえる子どもたち。やがて子も家を捨て、原爆の後遺症と窮乏のなかで一家は終わっていく。写真家の故・福島菊次郎さんの作品が足を止めます▼展示内容を一新した広島の原爆資料館を先日訪ねました。犠牲になった生徒たちが身に着けていた衣服、遺体の下にあった弁当箱や水筒、焼け焦げた三輪車と丸い頭の骨が残っていた鉄かぶと…。一つ一つの遺品から一人ひとりの苦しみや悲しみが伝わってきます▼被爆の前から後まで。一発の核兵器が人間の営みから何を奪ったのか。立ちすくみ、食い入るように見つめる無言の列が続いていました。吉永小百合さんの声による音声ガイドも、より深く理解する助けに▼外国からの見学者も多く、はじめて原爆の恐ろしさを知り、肌で感じたという人たちも。いろんな言葉で核兵器反対と書かれた感想をみると、世界を結ぶこの館の大切な役割を改めて▼被爆から74年となる6日、広島の松井一実市長は核兵器禁止条約への署名・批准を日本政府に求めました。唯一の戦争被爆国として、被爆者の思いをしっかり受け止めてほしいと。その実現は、あの日の歴史を語り続け、人類の未来につなげようとする資料館の思いでもあります。


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