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2019年8月5日(月)

主張

全国学力テスト

子どもの成長には役立たない

 文部科学省は、小学6年と中学3年を対象に4月に実施した全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)の結果を発表しました。新聞各紙は都道府県・政令市ごとの平均正答率を掲載しました。順位を付けて報じた新聞もあります。全国学力テストは点数競争の弊害を大きくするだけで、子どもに豊かな学力をつけることには役立たないことが、ますます明らかになっています。

全員対象の必要性なし

 発表された結果をみると、国語で自分の考えをまとめたり、読み手にわかりやすく書いたりすることが苦手、「勉強が好き」という子どものほうが正答率が高い―など、多くはこれまでも指摘されてきたことや改めて全国的に調べるまでもないことです。どうみても、毎年すべての子どもを対象にしてテストを行う理由はありません。

 一方で全国学力テストは全員を対象としてきたことで、回を重ねるたびに点数競争が激化し、問題を広げてきました。

 テストの結果は「学力の特定の一部分」「教育活動の一側面」(文科省)でしかありません。ところが、多くの教育委員会が「全国の平均点より上に」などと学校と教師をあおり、点数アップを現場に押し付けてきました。

 その結果、学校は子どもたちに過去の学力テストの問題を繰り返しやらせるなど「学力テスト対策」に追われ、ほかの教育活動がなおざりにされる傾向が強まっています。「学力向上」のためだとして、型にはまった授業のやり方が強要され、子どもの実態にあわせた教育を困難にしています。

 全国学力テストが実施される4月は、学年のはじめの重要な時期です。その時期に教師と子どもが「学力テスト対策」で追われることは、その後の学級づくりや授業づくりにとって大変な損失です。

 「難しいテスト問題」が子どもたちに「できない」という意識を植え付けていることもあらわになってきました。全日本教職員組合(全教)が昨年実施した調査では、「『できない』と意識する子が苦手意識を強める」「学力的に課題を抱えている子が前日に大暴れ」など、子どもが追い詰められている現状が指摘されています。

 中3の英語では正答率1・9%という「難問」もありました。そんな問題を全員対象に実施して意味があるのかも問われています。

 「テスト対策」のため授業時間が増えたり、宿題が多くなったりするなど、全国学力テストの実施は子どもにも、教員にも過度の負担を強いています。テストの準備と実施はもちろん、テスト対策のドリルのほか、テスト実施後に子どもの書いた答案用紙を即座にコピーして、独自採点する学校もあります。本来必要な授業準備の時間さえとれない教師の多忙化に拍車をかけています。

条件整備にこそお金を

 全国学力テストには毎年、数十億円もの予算がかけられていますが、教育条件の整備こそがいま緊急に求められています。

 豊かな学力を保障するためには教員の定数を抜本的に増やして多忙化を解消することが必要です。教員が授業の準備に十分に時間をかけ、創意あふれる教育ができるようにし、学習の遅れがちな子どもにも丁寧に対応できるようにするためにお金をかけるべきです。


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