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2019年8月4日(日)

主張

対韓輸出規制拡大

話し合いで事態の解決はかれ

 安倍晋三政権が、輸出管理の手続きを簡素化する優遇措置の対象国から韓国を除外する政令の改定を閣議決定しました。韓国に対して日本は7月、半導体材料の輸出管理を厳格化する措置をとっています。今回の規制強化は、日韓両国の関係悪化に一層拍車をかけるものです。韓国側は日本政府の対応に激しく反発しています。深刻化している事態を打開するため、安倍政権は今回の閣議決定を撤回し、韓国政府と解決に向けて冷静な話し合いを行うべきです。

政経分離の原則に反する

 今回の政令改定によって、軍事転用の恐れのある製品などの輸出先として問題がないとされて輸出優遇の対象となっていた27カ国から韓国は外れます。この仕組みで指定された優遇対象国が除外されるのは、韓国が初めてです。化学物質や工作機械など幅広い品目の韓国への輸出の際、原則として個別の許可が必要になります。さきの半導体の原材料などの輸出規制に続く、今回の輸出規制拡大は、さまざまな業界へ悪影響を及ぼすことが強く懸念されます。

 シンガポールのバラクリシュナン外相は2日、バンコクで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓の外相会議で、「信頼関係を増進して相互の依存度を高めることが、この地域の共同繁栄のために必要なことだ」と日本の措置が地域全体に否定的影響を与えることに懸念を表明しました。

 一連の輸出規制強化は、安倍首相が参院選の党首討論(7月7日)で「徴用工の問題で、国と国との約束(1965年の日韓請求権協定)を守れない国であれば(安全保障上の)貿易管理をちゃんと守れないだろうと思うのは当然だ」と述べたように、「徴用工」問題をめぐる韓国の対応に対する報復措置であることは明らかです。

 日本政府は表向き「韓国の輸出管理や運用が不十分なことを踏まえた見直し」(世耕弘成経済産業相)といいますが、韓国側のどこが「不十分」なのか具体的に示しておらず、説得力はありません。

 「徴用工」問題という政治上の紛争解決の手段に貿易問題を使うことは道理がありません。安倍政権のやり方は、政治問題を経済問題にからめない政経分離の原則に反する“禁じ手”です。

 「徴用工」問題などの政治的紛争の解決には外交的な話し合いしかありません。植民地支配下で強制労働させられた被害者に対する日本企業の賠償も、個人の請求権は消滅していないとの一致点を大事にして両国がよく話し合い、被害者の名誉と尊厳が回復できるようにしていくことが必要です。

「未来志向」の立場で

 米朝首脳会談や南北首脳会談など、北東アジアの非核化・平和をめぐり激動的な情勢が進展している下で、日韓関係が悪化の道をたどることは、あまりに深刻です。

 どんなに困難な問題であっても、粘り強く話し合い前向きに解決するのが政治の責任です。自制を求める声を聞き入れず、韓国に対し強硬姿勢を取る安倍政権の対応は大問題です。いまこそ「和解と善隣友好協力に基づいた未来志向的な関係を発展させる」(1998年の金大中〈キム・デジュン〉大統領と小渕恵三首相が発表した「日韓パートナーシップ宣言」)との立場で悪循環から脱却する努力を真剣に追求することが求められます。


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