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2019年8月3日(土)

主張

最低賃金の目安

大幅アップ・地域格差の解消を

 厚生労働省の中央最低賃金審議会が2019年度の都道府県ごとの最低賃金改定の目安を答申しました。全国平均で27円引き上げ、時給901円にする内容です。しかし、1000円以上は東京と神奈川だけで、17県は700円台です。最高の東京1013円と、最低の鹿児島787円との差は226円で、現在の224円より広がります。「直ちに全国どこでも1000円、速やかに1500円」という切実な要求から、あまりにかけ離れています。今後、各都道府県の審議会での議論を経て秋までに正式決定されます。大幅アップを実現する取り組みが重要です。

全国一律制の創設は急務

 最低賃金法にもとづき定められる最賃は、正社員、パート、アルバイトなど全ての働く人に適用されます。使用者は最賃以上の賃金を支払わねばならず、違反した場合は罰金が科せられます。最賃引き上げで恩恵が大きいのは、女性や若者が多い非正規雇用の労働者です。地方経済の活性化や労働者全体の賃上げへの波及効果もあり、大幅引き上げは、日本経済の成長にとっても急がれる課題です。

 安倍晋三政権は今年、全国平均時給1000円を「より早期に」と掲げましたが、従来の引き上げペースと変わっていません。全国平均901円を上回るのは、1000円を超えた2都県を含む7都府県です。これでは鹿児島が1000円になるのは10年先です。時給1000円でも、フルタイムの年1800時間で働く人は年収180万円で「ワーキングプア(働く貧困層)」水準です。ドイツやフランスの時給1200~1300円台と比べても日本はあまりにも低すぎます。直ちに1000円にするとともに、速やかに1500円にすることは、8時間働けば普通に暮らせる社会にするうえでの大前提となるものです。

 地域間格差の広がりも深刻です。東京と鹿児島の差を年収に換算すれば45万円にもなります。生活に必要なお金に地域ごとに大きな差がないことは全労連が全国的に取り組んだ最低生計費調査でも明らかになっており、地域の差を設ける合理的理由はありません。

 地域間の格差は、最賃の低い地域から高い地域へ人口を流出させる大きな原因になっています。最賃の格差を放置することは、地方から若者を減少させ、高齢化や過疎化、地域経済の疲弊にますます拍車をかけることになります。

 全国知事会が最近まとめた提言は、「地域間格差の拡大につながっているランク制度を廃止し、全国一律の最低賃金制度の実現」「最低賃金の引き上げ、これによって影響を受ける中小企業への支援の強化」を求めています。政府はこの声に真剣にこたえるべきです。

中小企業への支援強化で

 安倍政権下で、最賃の抜本的引き上げができない要因のひとつは、カギを握る中小企業支援策がきわめて貧弱だからです。14年度に35・9億円だった中小企業の賃上げ支援策予算を19年度は6・9億円に減らすなど、後ろ向きの政策を改めることが欠かせません。

 中小企業の賃上げ支援予算を7000億円へ抜本的に増やし、社会保険料の事業主負担分を、賃上げ実績に応じて減免する制度をつくることが必要です。最賃大幅アップ実現、全国一律最賃制度の創設へ向け力を合わせましょう。


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