2019年8月1日(木)
きょうの潮流
町で見かけた「七有八無」と書かれた貼り紙。幼少期を中国東北部の「満州」で過ごした、なかにし礼さんは終戦の記憶の中にその光景が畳まれています▼7月まで日本は有るが、8月には無い。突然のソ連軍の侵攻に「ああこれか」と。家族で避難した列車が機銃掃射を受け、目の前で頭を撃ち抜かれた軍人。おびただしい死体。死の淵に立たされながら、生きて日本に帰りました▼なかにしさんは戦後、数々のヒット曲を作詞。その後、みずからの戦争体験を小説化し、これを書くために自分は今日まで生きてきたんだという達成感にひたったといいます(『わが人生に悔いなし』)▼共産党の小池晃書記局長との対談ではこんなことも。「戦争という巨大な暴力の前では人間なんて藻屑(もくず)みたいなもの。いま戦争を知らない政治家が危機をあおり、戦争を是とする国論をつくろうとしている。だから戦争に反対するまともな政党を応援したくなる」▼追憶と追悼の8月が、まためぐってきました。まもなく終戦から74年を迎えますが、いまだに安らげない現実も。シベリア抑留者の遺骨を持ち帰ったところ、それが日本人ではなかったという失態は戦争犠牲者にたいする国の無責任な姿をあらわにしました▼「国の命令で戦地に赴き、どんな思いで彼らが死んでいったか」と憤る元抑留者。なかにしさんの父親もソ連軍の使役から戻り、すぐに亡くなりました。あの戦争を語り継ぎ、痛苦の意味を問いつづける。それが平和をつくる道にと願って。








