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2019年7月31日(水)

主張

米軍機事故・新指針

日本の捜査権侵害は変わらず

 日米両政府は、米軍機が基地の外で墜落などの事故を起こした際の対応を定めたガイドライン(指針)を改定しました。日本政府は、事故現場近くの規制線内への立ち入りが「迅速かつ早期に行われることが明確になった」と宣伝しますが、日本側の立ち入りに米側の同意が必要なのは今までと変わりません。しかも、今回の改定は、日本側が事故機の捜索や差し押さえの権利を放棄した既存の日米合意などにも「影響を与えない」と明記し、日本の捜査権が著しく制限されている主権侵害の状況を固定化するものとなっています。

立ち入り米軍の許可必要

 基地外での米軍機事故の対応に関するガイドラインは、2004年8月の沖縄国際大学(沖縄県宜野湾市)への米軍ヘリ墜落事故で米側が一方的に現場一帯を封鎖して機体の回収などを行い、県民の怒りが高まったことを機に策定されました。05年4月に日米間で合意され、現場近くに設ける規制線(内周規制線)内への立ち入りは「(日米)相互の同意に基づき行われる」としました。

 ところが、17年10月に沖縄県東村高江の民間牧草地に米軍ヘリが不時着し炎上した事故で、米側は日本側の内周規制線内への立ち入りを認めず、結局立ち入りができたのは6日後でした。米側はその間に機体ばかりでなく周辺の土壌まで持ち去っていました。

 こうした対応に県民の批判が強まったのを受け、今月25日に発表されたガイドラインの改定では、内周規制線内への「迅速かつ早期の立ち入り」との文言を入れました。しかし、立ち入りが「相互の同意に基づき行われる」との記述はそのままで、米側は引き続き日本側の立ち入りを拒否できます。

 さらに、今回の改定で見過ごせないのは、米側は事故現場が民間地であっても「事前の承認なくして…立ち入ることが許される」と明記されたことです。沖縄国際大への墜落事故や東村高江での不時着事故のように、米軍が大学当局や土地所有者の許可もなく現場を封鎖する事態を今後も認めるということです。

 米側が事故機の残骸、部品、残滓(ざんし)物などを管理し、「資格を有する者のみに…機密の装備又は資材へのアクセスが付与されることを確保する」とされたのも重大です。

 日米安保条約に基づく地位協定は、在日米軍に治外法権的特権を与えています。しかし、そうした協定でも、基地の外の米軍事故については日本の捜査権を認めています。基地の外の米軍事警察の任務は米兵間の「規律及び秩序の維持」に限られ、必要な捜査や証拠の収集で日米は相互に援助しなければならないと規定しています。

 ところが、地位協定に関する日米の了解事項を記した「合意議事録」では、日本側が米軍財産について「捜索、差し押さえ又は検証を行う権利を行使しない」としています。今回改定されたガイドラインは、日本側の捜査権放棄、排除を一段と明確化するものです。

地位協定の抜本的改定を

 沖縄県は、日米地位協定を改定し、基地外の事故現場の統制は日本側主導で行うことや、日本側が米軍財産の捜索、差し押さえ、検証の権利を行使することを明記するよう求めています。主権国家として当然の要求です。地位協定の抜本改定は不可欠です。


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