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2019年7月19日(金)

きょうの潮流

 安倍政権の対韓輸出規制強化によって悪化する日韓関係ですが、一方で韓国文学に注目が集まっています▼特集「韓国・フェミニズム・日本」を掲載する文芸誌『文芸』秋季号は、1933年の創刊号以来86年ぶりの3刷という売れ行きです▼翻訳家の斎藤真理子・鴻巣(こうのす)友季子両氏の対談「世界文学のなかの隣人」では、日本による植民地支配・朝鮮戦争・南北分断・軍事政権・徴兵制の下で韓国文学は常に思想性・政治性を問われ、倫理と大義を提示してきたと指摘。身近な日常を語る現代の小説にも「まともさの追求」が根底にあり、フェミニズム小説もその現れだと言います▼韓国社会の女性差別を告発し日韓で話題となった『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者チョ・ナムジュの初邦訳「家出」は、家長の権威を掲げて家族を守ってきた父が突然、身一つで出て行ってしまう物語。残された家族は和やかに食卓を囲み、母は自分の意思を語り始めます。家父長制は女性を抑圧するだけでなく、男性をも疲弊させることを暴きます▼ブッカー国際賞を受賞した韓国の作家ハン・ガンの書き下ろし「京都、ファサード」は、韓国と日本に隔てられた女性同士の友情の物語。互いの真意をつかめず行き違い、断ち切られてしまった痛みを、「私は良い友であり、信じられる人間であったか」という内省とともに描きます▼壁を越える力。文学は、私たちが喜びと悲しみ、希望、苦悩を抱えた人間なのだという共感を、差異を超えてもたらしてくれます。


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