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2019年7月15日(月)

ごまかしに満ちた首相の街頭演説

分断の政治に終止符を

 安倍晋三首相は参院選の街頭演説で、毎日のように悲願である憲法改定に言及し、「(自衛隊違憲)論争に終止符を打つために、憲法への自衛隊明記を公約に掲げている」と声を張り上げています。改憲の訴えを“封印”してきたこれまでの選挙とは180度違う姿勢。「やっと言いたいことが言えた」とでも思っているのか、演説後にはどこか満足げな表情を見せています。

 その表情とは裏腹に、訴えの中身は、ごまかしに満ちています。9条への自衛隊明記の中身は言わず、憲法審査会で「議論をする政党や候補者か、審議を拒否する政党や候補者か」だけを問う欺瞞(ぎまん)。公示後初の週末、首相がマイクをもった滋賀県草津市で、50代の女性は「憲法、憲法と言うけれど、だから何? もっとやるべきことが他にある」と憤りました。

 大争点となっている年金問題をめぐっても、逃げとごまかし、事実に反する野党批判に終始しています。「年金だけで暮らせない」という国民最大の不安に向き合い、具体的な打開策を示すことはありません。ひたすら、自公政権の「強い経済」で「4月から年金額を増やした」と強調し、物価上昇率を加味すると年金額は実質0・9%減らされている事実には口を閉ざしています。

 同時に、党首討論で「マクロ経済スライド」廃止とその財源について繰り返し議論したことを全く無視し、「野党は財源に裏打ちされた具体的な提案は何もせず、不安ばかりあおっている」と吹聴します。

 首相は演説の最後に必ず、「帰りに期日前投票を」と呼びかけます。その場しのぎで有権者をだまし、1票を得さえすればそれでいいという、不誠実な姿勢が垣間見えます。

 立憲民主党の枝野幸男代表を「民主党の枝野さん」と“言い間違い”した時も、首相は楽しげでした。選挙のさなかに公党の党首の所属を偽って宣伝することは選挙妨害に当たる行為です。抗議を受けてもなお、「怒るのなら、名前をころころ変えないでもらいたい」と居直る首相に、大分県別府市では聴衆から笑いと拍手がおきました。

 異なる意見を「敵」とみなし、相手をおとしめることで自らの浮上を図る。まともな政策論争には応じない―。これが民主国家の首相の姿かとあぜんとする一方、こうした首相の姿勢が政治や社会、民主主義の土壌をむしばみ、分断を生んでいるさまを肌で感じます。

 こうした政治に終止符を打ち、真摯(しんし)な政策論争の上に、くらしに希望をもたらす政治を切りひらく選挙にしなければ―。

 (前田美咲)


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