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2019年7月1日(月)

きょうの潮流

 「らい病や」。人けのない家で顔を近づけてきた母が発したひと言。そこから、誰にも言えない秘密を背負ったひとりの少年の人生が始まりました▼黄光男(ファン・グァンナム)さん。1歳のときに両親と姉二人がハンセン病とされ、岡山の長島愛生園に強制隔離。黄さんは育児院に預けられました。後に一緒に暮らしますが、過去は周りに隠したまま。結婚して子どもができ、妻に思い切って打ち明けるまで苦悩は続きました▼家族を引き裂かれ、つねに暗い影がまとい狂わされた人生。村八分やいじめ、離縁や勘当にあい、みずから命を絶った人も。国によって偏見や差別が助長されたハンセン病は、患者とともにその家族を苦界に突き落としました▼黄さんが副団長を務める家族の集団訴訟で、そこに光をあてる判決がありました。被害をうけた家族への賠償を認め、社会に根づかせた偏見差別をとり除く義務を怠ったとして国を断罪。いまも消えない恐怖におびえる人たちに勇気を与えました▼1世紀近くもの間、本人や家族を社会から隔て、遠ざけた国の誤った政策。「この国からそれぞれのいのちの証を/絶対かちとらずにはおかぬ/国は家族から引き離しふるさとを奪った/名前を奪い未来まで奪った」。それとたたかい続けた谺(こだま)雄二さんは生前こんな詩を残しています▼人間回復への長い道のり。谺さんの詩には続きがあります。「人権とは侵しても侵されてもならぬもの/この国からきっとたたかいとる/いかに生きたか/人間の尊厳そのいのちの証」


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