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2019年6月26日(水)

きょうの潮流

 あのヒトラーが法廷に引っ張り出されたことがありました。1931年のベルリン、暴力と破壊でドイツ市民を恐怖におびえさせたナチス突撃隊が起こした殺人事件の証人として▼召喚したのは若き弁護士ハンス・リッテン。当時、ヒトラー率いるナチ党は国政選挙で躍進中でした。リッテンは彼らの無法や暴力行為が計画的に行われている証拠を示しながらヒトラーに詰め寄りました▼突撃隊はスポーツ隊だと言い張り、殺人という言葉が使われることを拒絶し、彼らは祖国を守ろうとしたと激高するヒトラー。しかし、翌日の新聞には「リッテン勝利」を伝える記事が躍ったといいます▼後の独裁者はこの時の屈辱を忘れず、自分を追い詰めた弁護士を決して許しませんでした。大規模な政治弾圧が始まるとリッテンも捕らえられ、監獄でひどい拷問や虐待にあい、命を奪われます▼いま劇団民藝が都内で公演する「闇にさらわれて」。息子を救うため命がけで奔走した母イルムガルト・リッテンを日色ともゑさんが演じています。ナチの不正義とたたかったイルムガルトの手記『黒い灯』(野上弥生子訳)を読み、女性の内側に潜む激しい思い、母としての深い愛情を表現したいと▼強権と憎しみが支配した時代。リッテンは収容所で衛兵に囲まれながら詩を朗読します。「私を縛って真っ暗な土牢の中に閉じ込めてもまったくの無駄骨折りというものだ/なぜなら私の思想だけは戒めを引きちぎり壁を打ち破ってとびだすから/思想は自由だ」


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