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2019年6月21日(金)

政治考

参院選目前 自民「逆風だ」

「私たちが試されている」

暮らせる年金求める市民

 16日に東京都内で行われた「年金返せデモ」。ツイッター(短文投稿サイト)での短期間の呼びかけに、世代を超えた市民約2000人が結集し、「生活できる年金払え」と銀座で声をあげました。参院選を目前に、広がる貧困・格差拡大の政治への怒りに、安倍政権と自民・公明の与党は動揺を強めています。


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(写真)生活できる年金払えと通行人にアピールする人たち=16日、東京・銀座

初めてデモ参加

 デモに初めて参加した40代の女性は、年金だけでは老後資金が2000万円不足するとした金融庁審議会の報告に「無理です。(安倍政権は)もともと悪いと思ってきたけど開いた口がふさがらない。どこまで悪くなれるのだろう。私たちが試されているとしか思えない」。デモに参加して「思ったより多くの人がいた。香港もああいう感じ。タイムリーですね。若い人が政治に関心をもってくれれば絶対に変わると思う」と顔をあげました。

 スマホでデモを撮影していた24歳の女性は、「私も年金はもらえないものとして計算しています。(でも)年金保険料も払っているのに、もらえないとなると本当におかしい」「2000万円必要問題で母がすごく不安になって」といいます。「そういう政権をみんなで選挙に行って退陣させないのかな。参院選もあるし早く失脚してほしい」。政治を変えたい思いがあふれます。

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(写真)党首討論する志位和夫委員長(左)と安倍晋三首相(右端)=19日、国会内

耐えられるのか

 国民世論と政治局面の急変を示す動きを与党内はどう見ているのか。

 自民党国会議員の1人は「老後に年金が足りないという根本的議論に安倍政権は耐えられるのか」と危機感を募らせます。同党関係者は「年金問題は(7月の参院選の)改選議員にとって逆風以外の何ものでもない。(金融庁審議会の)報告書を受け取らない、質問に答えないという対応が失敗だ」と顔をしかめます。麻生派の関係者は「選挙に影響は出る。われわれも金融庁の報告書を批判していく」などと、あからさまに責任回避での逃げ切り姿勢を示します。

 安倍政権は18日、金融庁審議会の報告書についての野党議員の質問主意書に対し、「正式な報告書」として受け取っていないことを理由に回答を拒否する答弁書を閣議決定。野党が繰り返し求めている衆参予算委員会の開催からも逃げ回っています。

 19日の党首討論で日本共産党の志位和夫委員長は安倍晋三首相に、高額所得者への保険料の引き上げなどで1兆円の財源を確保し、年金の自動削減システムである「マクロ経済スライド」を廃止して「減らない年金」にする案を提示しました。しかし、安倍首相は提案にはいっさい答えず、「マクロ経済スライド」に固執しました。

 志位氏は「いま政治に求められるのは、貧しい年金の現実を直視し安心の年金に変えるための責任を果たすことであり、報告書を隠ぺいすることではない」と批判しました。

非正規増やし社会保障削る自民政治

貧しい年金は構造的問題

 憲法学者らでつくる立憲デモクラシーの会の西谷修東京外国語大学名誉教授は16日の「年金デモ」に注目し、「大きなデモではないが、(運動に)火を付けるきっかけになる」と指摘。「今回の年金問題を通じて、政権の崩れがどんどん下がって、いわばどぶ板のところまで来た」と語ります。「政府は国民の『老後の暮らしに責任は持たない』という姿がはっきり見えた。同時に都合の悪いことにはフタをする。徹底的に国民をだます体質が集約的に表れた。これに国民は怒っている」

困窮する高齢者

 安倍晋三首相は、通常国会前半、消費税率10%への引き上げをめぐり、個人消費や実質賃金の落ち込みを指摘されると「総雇用者所得」の増加を繰り返しました。

 総雇用者所得の増加は雇用者数の増加によるもの。しかし増加の7割は65歳以上の高齢者です。まさにリタイアした高齢者が年金では生活できず、困窮して働きに出るという実態があります。

 首相は、実態を突き付けられても「雇用者数の伸びを評価しないのは驚きだ」などと開き直ってきました。年金で生活できない貧困問題を放置したまま、安倍政権は貧困層に最も厳しい負担を課す消費税10%増税を強行しようとしています。

 ツイッターを見て16日のデモに一人で来たという33歳の男性は「(保険料を)払えばその分だけ老後を保障してくれるとみな、思っている。それをほごにされて老体になっても働けっていうのか」と怒りを募らせます。

 自民党参院議員の1人は「年金制度自体の問題だけでなく、報告書を受け取らないという対応は、国民の不安に向き合わないとみられている。これはすべての問題で反発を広げる」とし、「選挙に向け(自民党が実施した)情勢調査の数字が良いというが体感は違う。年金に加えて、農産物の関税撤廃問題を問われたら、参院選は本当にきつくなる」と顔をしかめます。前出の党関係者も「参院選1人区は東北を中心に農業地域だ。トランプとの農産物輸入自由化の『合意』で説明に苦しんでいる」と繰り返します。

23日都内でデモ

 貧困と格差の解決、最低賃金引き上げなどで行動する集団「エキタス」の藤井久美子さんも16日のデモに参加しました。藤井さんは「年金問題を改めて示され、選挙を理由にごまかすのは、私たちの生活についてちゃんと考える気も、何とかしようとする気もないということ」と批判。「非正規のままでは厚生年金はもとより、国民年金さえ払えず、無年金の人もたくさんいます。非正規を増やし低賃金で働かせ、社会保障を削る仕組みは、小泉政権以来、自民党政治がつくってきた構造で、今回の年金問題もそのあらわれ」と怒りをあらわにします。

 エキタスは23日にも都内で「最低賃金1500円」を求めるデモを行います。

 (中祖寅一、日隈広志、藤原直)


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