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2019年6月17日(月)

主張

民泊新法施行1年

まちを守る規制強化は不可欠

 一般の住宅に旅行者などを有料で宿泊させる「民泊」を解禁する「民泊新法」(住宅宿泊事業法)の施行から15日で1年となりました。新法は、管理者設置要件などの基準が極めて緩く、届け出さえあれば基本的に営業を認めるというものです。その結果、民泊は急増し、観光地を中心に住環境などに影響を与えています。“民泊推進ありき”の姿勢を改め、規制を強化し、住民も観光客も安心できる地域にすることが必要です。

届け出数は7・8倍に

 観光庁によると、民泊宿泊者数は、新法施行直後(昨年6~7月)は延べ22万3千人強でしたが、今年2~3月は延べ74万8千人弱へと3倍以上になりました。民泊としての届け出は今月7日時点で1万7301件です。施行時2210件の7・8倍にのぼります。民泊は、旅館業法や国家戦略特区での許認可で営業できる方法もあるので、実際は新法に基づく届け出の倍以上ともいわれます。

 虚偽の申請、行政の監視の目が届かない海外サイトへの登録などによる「ヤミ民泊」は依然なくなりません。民泊仲介最大手・米国のエアビーアンドビー社が新法施行後も「ヤミ民泊」の疑いのある物件をサイト上で掲載を続けていたことが発覚し、観光庁が削除を指導する事態も起きました。住民が知らない間に住宅密集地や路地裏にも民泊が乱立し、騒音やゴミ捨てをめぐって地域との摩擦が起きるケースも少なくありません。

 新法では、地方自治体が条例により、事業実施を制限することができます。都道府県、政令市、中核市、特別区など154自治体のうち、54自治体が営業できる区域や期間の制限を含む条例を制定しています。トラブル発生を危惧する地域の要望を一定反映したものです。ところが観光庁は、こうした自治体の取り組みについて「民泊の届け出が伸び悩む原因になっている」と問題視し、規制を緩めさせようとしています。地域の声を無視する姿勢は大問題です。

 民泊急増の背景に安倍晋三政権の「観光立国政策」があります。昨年3000万人を突破した訪日外国人旅行者を、「20年に4000万人、30年に6000万人」にする目標の達成を至上命令にし、数の追求に躍起です。宿泊客数などを重要指標にし、観光関連産業の「生産性向上」などで「『稼ぐ力』を一層高めていかなければならない」(2015年「観光白書」)と強調します。

 もうけのため無理を重ねた「観光立国」は矛盾を広げています。例えば京都市では、「違法民泊」横行に加え、ホテル建設ラッシュによる地価高騰など「観光公害」と呼ばれる事態を招いています。

 オーバーツーリズム(観光地が耐えられる以上の観光客が押し寄せる状態)をもたらした政策の抜本的見直しが求められています。

景観と文化を守ることが

 民泊については、密集市街地やマンションでの営業規制、宿泊者の安心・安全を保証するための「管理者常駐」の義務付け、近隣住民の合意のない営業を認めないなどの規制の強化が急務です。

 景観や文化を守るまちづくりを進めることが住民にも観光客にも「魅力ある観光資源」です。「稼ぎ偏重」でなく、「住んでよし、訪れてよし」の理念を貫く「観光立国」こそが求められています。


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