しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年6月14日(金)

安倍外交 八方ふさがり

米国頼み 際立つ主権放棄

本質的解決なし 虚像つくる

 「世界の真ん中で力強い日本外交」―。自民党が7日に発表した参院選公約は、「外交」を前面に押し出しています。安倍政権は大阪で開催される20カ国・地域(G20)首脳会合(28~29日)などで成果をあげ、参院選へのアピール材料にする狙いでした。しかし、主権国家としての毅然(きぜん)とした対応を欠いた安倍晋三首相の外交は破たんし、八方ふさがりに陥っています。

 (桑野白馬)


“G20で決着”は絶望的

日ロ領土問題

 「私とプーチン大統領とのもとで必ず終止符を打つ」―。G20での日ロ首脳会談(29日)で平和条約に関する大筋合意を実現するという安倍首相のシナリオは絶望的です。

 日ロ領土問題は、旧ソ連のスターリンが領土不拡大という第2次世界大戦の戦後処理の大原則を破って、千島と北海道の一部を占領した不公正をただすことなしに解決できません。

 しかし、成果を急ぐ安倍首相は2018年11月の日ロ首脳会談で、事実上、政府の従来方針である「4島返還」すら投げ捨て、歯舞、色丹の「2島返還」で平和条約締結=国境画定へ後退しました。この後、政府は「北方領土」は「固有の領土」であるとの表現を封印。4月に公表した外交青書でも「日本に帰属」との記述を見送るなど主権放棄の姿勢が顕著となりました。

 一方、ロシア側は“弱腰”の安倍政権の足元を見るように、強硬姿勢を強めています。ラブロフ外相は「第2次世界大戦の結果を認めなければ平和条約締結は不可能だ」との立場を強調。さらに、ロシア側は5月30日の日ロ2プラス2(外交、軍事担当閣僚会議)で、政府が配備を狙う陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」に懸念を示し、「北方四島」の軍事拠点化を正当化しました。米国から導入を押し付けられているイージス・アショアが日ロ間の領土交渉にも悪影響を及ぼしています。

ルートなし、「トランプ頼み」

日朝首脳会談

 安倍首相は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長との日朝首脳会談について、「前提条件なし」に実現を模索する考えを表明。北朝鮮による日本人拉致問題の進展などを日朝会談の前提としていた方針を一変させました。

 昨年6月の米朝会談以降、対話と交渉によって、朝鮮半島の非核化と平和体制の構築をめざす動きが起こりました。はしごを外され、従来の「圧力一辺倒」政策の破たんが明らかになると、安倍首相はトランプ政権に追随するように、国連演説で「圧力」の言葉を封印。金氏と「直接向き合う用意がある」と述べるなど、態度を変化させてきました。

 和田春樹東京大学名誉教授は「安倍首相は拉致被害者家族からの要請など国内世論に押されて直接向き合わざるをえなくなった」と指摘します。 

 しかし、北朝鮮側は安倍首相の表明を「厚かましい」と一蹴しています。2002年に訪朝を実現した小泉政権は独自のルートで北朝鮮と水面下の交渉を重ねてきましたが、安倍首相の場合はもっぱら「トランプ頼み」です。和田氏も政府が主張する「北京の大使館ルートを通じての交渉」については「単なる一方通行のお互いの立場の伝えあいであり、水面下の交渉とは言えない」と指摘しました。

武器、通商 エゴにこびる

米国追従

 「抱きつき外交」とやゆされ、世界に醜態をさらしたのがトランプ大統領の来日(5月25~28日)です。安倍首相は「強固な日米同盟」をアピールするため、トランプ氏をゴルフや相撲観戦で異例の歓待。「アベほど大統領のエゴにこびるのに熱心な首相はいない」(米紙ワシントン・ポスト)などと酷評されました。

 安倍氏とともに護衛艦「かが」を視察したトランプ氏は、米国製のF35ステルス戦闘機105機を日本が購入すると強調し「同盟国の中でも最大規模のF35戦闘機群を持つことになる」と歓迎。さらに、通商交渉に関してトランプ氏は、「8月に何らかの合意を発表する」と表明し、「環太平洋連携協定(TPP)には縛られない」とも強調。米国から大量の武器を買わされ、農業分野では参院選後に大幅な譲歩をするとの「日米貿易密約」まで浮上する結果になりました。

「国民の目をそらしている」

イラン訪問

 こうしたなか、成果が欲しい安倍首相は12日、イランを訪問しロウハニ大統領と会談しました。米国が昨年5月にイランをめぐる核合意から離脱したことによる緊張を緩和するための“仲介役”をかってでようというのです。

 元外務省国際情報局長で、駐イラン大使などを歴任した孫崎享氏は、会談後の記者発表でイランが核合意の維持を表明したことは重要だとした上で「米国が核合意から離脱したことが問題の本質。首相が『核合意を守るべき』という相手はトランプ大統領だ」と指摘。米国が合意の枠組みに戻るよう世界の世論が働きかけることが必要だとして「米国が合意離脱を表明した時に、中東全体の和平にとってマイナスになると懸念を表明すべきだった」と強調します。

 孫崎氏は安倍首相の展開する外交を「どれも解決できないから次々と場所を変えて、国民の目をそらしている」と評し「つまみ食い外交」と形容します。「それぞれの問題を本質的に解決する姿勢で臨んでいない。一方で、あたかも良いことをやっているふりをして国民の中に『外交の安倍』という虚像をつくっている。腰を落ち着けて、個々の問題の解決に向け真剣に取り組んでほしい」


pageup