2019年6月13日(木)
改定ドローン禁止法きょう施行
基地の実態隠すのか
沖縄 辺野古にみる
| |
| |
| |
| |
|
米軍や自衛隊基地上空での小型無人機(ドローン)の飛行禁止を加えた「改定ドローン飛行禁止法」が13日に施行されます。基地に対する国民の監視の目をふさぎ、知る権利を侵すとして懸念の声が上がっています。
今回の改定で、飛行禁止の対象に米軍や自衛隊基地など「防衛関係施設」を追加。対象は防衛相が指定し、施設の敷地・区域とその周囲おおむね300メートルの地域上空を飛行禁止にします。禁止区域での飛行には「施設管理者」=米軍・自衛隊の同意が必要。違反には1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
米軍については、基地の敷地だけではなく提供水域・空域も飛行禁止区域に含まれます。これまで、市民や報道機関が上空からドローンで辺野古新基地の工事現場を撮影し、違法工事を告発してきました。11日に防衛省沖縄防衛局が新たにK8護岸から土砂搬入を開始した際にも、市民らがドローンで監視し、違法工事を告発しました。しかし、工事現場は米軍キャンプ・シュワブの広大な訓練水域の中にあるため(図)、今後は撮影が困難となるおそれがあります。
「戦争できる国」の流れ
弁護士 仲松正人さんに聞く
「改定ドローン飛行禁止法」の問題点について、「辺野古ドローン規制法対策弁護団」の仲松正人弁護士に聞きました。(聞き手・柳沢哲哉)
改定ドローン法について、政府はテロ対策を口実にしますが、2016年の「飛行禁止法」の施行以降、同法違反の検挙事例も、警察官が安全確保措置をとった事例もありません。防衛関係施設(米軍、自衛隊基地)を対象とすることについて「近時のテロ情勢を踏まえ」としていますが、国内で具体的な脅威があったわけでもなく、改定の緊急性・必要性はありません。
内容も問題が多く、報道の自由や国民の知る権利の保障が明示されていません。政府は国会で「報道機関の取材活動を制限する意図はない」と答弁していますが、法にそのような規定はありません。
また、禁止区域指定の基準が不明確です。防衛省の都合や米軍いいなりの指定がされる可能性が高く、本当に指定が必要かどうかの検証もできません。
施設管理者(自衛隊や米軍)がドローン飛行申請に同意するかどうかの基準も不明確で、同意・不同意の理由が国民には明らかにされません。
また、政府は「施設の管理者の行う同意、不同意は行政処分に当たらず、行政事件訴訟法の適用対象ではない」と答弁しました。国民は飛行申請の不同意に対し不服申し立てができず、権利侵害を回復する手段がとれなくなります。
さらに、自衛官が自衛隊施設外で警察権を行使できますが、その活動範囲が限定されていません。
改定ドローン法により米軍提供施設や水域、空域が集中する沖縄県では広大な飛行禁止区域が設定され、辺野古の新基地建設工事や、宮古島・石垣島の自衛隊基地建設の実態監視ができなくなり、違法工事やずさん工事が横行する可能性があります。これまでドローンの空撮で辺野古新基地工事の違法性などが暴かれてきました。法改定には工事の実態を隠す狙いがあります。
基地内で何が行われているのかが分からなくなることで、秘密裏に戦争の準備が進むことにもなりかねません。改定法の本質は、秘密保護法や共謀罪などと同様、国民の目や耳をふさぎ、安保法制を中心とする「戦争ができる国家」をつくる一連の流れの中にあるといえます。
世論形成が重要
これからのたたかいとして当面は、飛行禁止区域指定を必要最小限にさせることや恣意(しい)的運用をさせない取り組み、不服申し立て方法の検討・模索などが挙げられます。世論の形成も大事です。根本的には、改定法を国民の知る権利を保障させるために改廃させる取り組みが必要です。