しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年6月1日(土)

地方分権一括法 学童配置基準を改悪

共産党反対 田村氏「安全と矛盾」

参院本会議で成立

写真

(写真)質問する田村智子議員=30日、参院内閣委

 学童保育(放課後児童クラブ)の職員基準を緩和する児童福祉法改悪など、13本の法律をまとめて見直す第9次地方分権一括法が31日、参院本会議で自民党、公明党などの賛成で可決、成立しました。日本共産党は反対しました。

 これまで「従うべき基準」だった学童の1クラス2人以上(うち1人は都道府県の研修を修了した放課後児童支援員)の職員配置基準は、拘束力のない「参酌基準」となり、自治体の判断で無資格者1人での運営も可能になります。

 また、博物館や図書館、公民館といった公立施設の所管を、自治体の判断で教育委員会から首長部局に移せるよう、社会教育法など4法を改悪。首長の意向で社会教育行政の政治的中立性がゆがめられかねません。

 これに先立つ30日の内閣委員会で日本共産党の田村智子議員は、学童の職員基準の参酌化は子どもの命と安全の保障と矛盾すると批判しました。

 田村氏は、「学童は子どもの安全を守ることが第一義的に求められているのに、事故や事件、災害のときも1人で対応していいことになる」と厳しく追及しました。片山さつき地方創生相は「条例改定の判断は市町村が負っている」と答弁。田村氏は「国の責任放棄だ」と主張しました。

 参酌化を提案した愛知県豊田市では、66カ所すべての施設で職員が全員非正規雇用で、週2~3日のローテーション勤務です。

 田村氏は「学童指導員の専門性も認めない自治体から『自治体に任せろ』と提案され、法律を変えるなどあり得ない」と指摘。自治体ごとに賃金や勤続年数に開きがあるとし「低いところを引き上げる支援策を思い切って進めるべきだ」と強調しました。


解説

安倍流支援策の地金

 多くの声に押され学童運営にかかわる基準がつくられてから、わずか4年。安倍政権は、唯一「従うべき基準」とされた職員配置基準を、自治体の判断で引き下げ可能な「参酌基準」に改悪しました。施政方針で「子どもを産み、育てやすい日本へと大きく転換する」と語った安倍流“子育て支援”の地金があらわになりました。

 子どもの命に直結する基準の見直しにもかかわらず、安倍政権は性質の異なる他の12本の法律と一括審議とし、審議時間も衆院で5時間、参院では5月28日の趣旨説明からわずか3日で本会議での成立へと突き進みました。

 政府は「(これまでの配置基準では)クラブの運営に支障を来すと感じた自治体が非常に多かった」(片山さつき地方創生相)などと繰り返しました。しかし、基準緩和を政府に求めたのは、実際は7県15市町だけ。

 反対に、「基準堅持」「質の確保」を求める意見書を議会で可決する動きが広がり、全国学童保育連絡協議会(全国連協)の調べでは23日現在、11道県、39市町に上ります。全国連協の基準堅持を求める署名も5月上旬時点で28万8千人分に達します。

 現場からは、指導員の半数が年収150万円未満という状況を放置したまま、指導員の負担を増大させる配置基準緩和を実行すれば、人材確保はいま以上に難しくなるとの声が上がります。政府の言い分は完全に破綻しています。

 同時に、職員配置が参酌化されたとしても、自治体はむやみに基準を引き下げられるわけではありません。自治体に基準を守らせ、引き上げさせるための運動が重要になっています。

 (佐久間亮)


pageup