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2019年5月27日(月)

主張

歩行者の安全

「クルマ優先」のひずみ正そう

 歩道で信号待ちなどをしていた歩行者が、突然突っ込んできた自動車にはねられ死傷する悲惨な事故がなくなりません。今月初めに滋賀県大津市で起きた保育園児・保育士16人の死傷事故をきっかけに、保育園の散歩コースや学校の通学路の安全点検などが行われています。危険箇所を解消する取り組みがなにより急がれます。同時に、歩行者より自動車が優先されている日本の道路・交通政策のあり方も問われています。国民の命と安全を守るため、多くのひずみを生んでいる「クルマ優先社会」を転換することが求められます。

子どもの安全を第一に

 大津市の事故(8日)は、2台の車が交差点で衝突し、1台が歩道に乗り上げ、信号待ちしていた散歩中の保育園児らをはね、園児2人が死亡、1人が重体、保育士を含む13人が重軽傷を負ったものです。その直前には、東京都豊島区で横断歩道を渡っていた母子らが暴走した車にはねられ10人が死傷した事故(4月19日)、神戸市で市営バスが横断歩道を渡っていた歩行者をはね8人を死傷させた事故(同21日)が相次いで発生しました。いずれの事故も歩行者側に落ち度はありません。普通に歩いていて命を奪われる―。理不尽というほかありません。

 深刻なのは、このような事故が後を絶たない現実です。大津市の事故を受け、各地の保育園などで散歩コースの安全性をチェックする取り組みが広がっているのも、日ごろから交通事故の危険性を感じている関係者が少なくないことの反映です。以前から危険と思われる場所の改善を行政などに申し入れても、なかなか対応されないという声もあります。交通量の多い場所に保育施設があるケースもあります。商業施設が近くに新設されたことで車の通行が増えるようになったまちの保育施設もあります。地域の変化や現場の実情に即して、ガードレールや信号の増設、歩道の確保など、必要な予算を確保して対策をすすめることが急務となっています。

 2012年4月、京都府亀岡市で集団登校中の小学生らの列に車が突っ込み、10人が死傷した事故の後、政府は全国の通学路の危険箇所を緊急点検し、一定の改善をはかる取り組みを実施しました。5年以上たったいま、改めて通学路を中心とした点検と対策が不可欠となっています。その際、学校の近くの道路の速度規制の厳格化や、道路にデコボコをつけて自動車の速度を落とさせる「ハンプ」(こぶ)の設置などを含め、子どもたちが安心して歩けるような道路整備を検討すべきです。子どもの安全は高齢者をはじめ、地域の人たちの安全にも直結します。

人に優しいまちづくりを

 日本では交通事故の死者数は減ってきたものの、歩行中の人の死亡率は35・0%で、ドイツ15・3%、フランス16・1%、イギリス24・9%と比べ極めて高いのが実態です。1960年代から自民党政権の下で急激に自動車が普及し、自動車のための道路整備・まちづくりが優先されたことが背景にあります。長年かけて歩行者と自動車との“すみわけ”をすすめてきた欧州諸国との政策の違いを指摘する研究者もいます。「クルマ優先」を根本的に見直し、人間を優先した優しい道路・交通政策への転換が重要です。


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